10時間、休憩なし。時給は8時間分

伊藤杏奈さん(仮名・25歳)は、有名アパレルブランドに勤めていました。憧れのブランドで販売員の仕事でしたが、実際に働いてみると長時間労働、低賃金の職場でした。

「毎日10時間、休憩はほぼ取れません。トイレに行くことすら許可が必要なほどでした。忙しい店舗で接客し続け、足は腫れて、帰宅後は痛みで眠れません。なのに給料明細を見ると、時給はなぜか8時間分しかありません。6連勤も当たり前で、計算してみたら時給換算で最低賃金を下回っていました」

伊藤さんの会社は、全国に約100店舗を展開する大手アパレル会社です。百貨店、駅ビルに入っている会社だからといって、きちんと法令を守るとは限りません。労働基準法では、休憩時間が定められています。それを無視し、毎日10時間も立ち仕事を続けていれば、大きな健康リスクにもさらされてしまいます。

伊藤さんが退職を決意したのは、休日に街で自社ブランドの服を着た人を見かけ、吐き気を覚えたことがきっかけでした。

「あんなに大好きだったのに、もう見たくもありません。お客様に勧めるのにも罪悪感を覚えてしまいます」

それでも、伊藤さんは退職を会社に申し出る勇気がありませんでした。

「辞めたいと言った先輩が、人手不足を理由に怒鳴られているのを見ていたからです。私も同じ目に遭うと思ったら、とても言い出せませんでした」

伊藤さんが依頼をして数日後、無事に退職は確定しました。しかし、この件で弊社は予想外の騒動に巻き込まれることになります。

●後編【「どうして退職代行なんかしてるんだ?」大手アパレル社長から40回超の嫌がらせ…モームリが巻き込まれた警察沙汰のトラブル】にて、ブラック企業では自ら辞めたいと言えないのが当然な理由をお話しします。