<前編のあらすじ>
金融系システム会社に勤務する曽根雅樹さん(仮名・52歳)は、子供の頃からかわいがってくれた母方の叔母(79歳)と5年以上疎遠になっていました。久しぶりに叔母の家を訪れると、懐かしい料理でもてなしてくれる温かい叔母の姿がありました。
しかし、偶然目にした契約書から、叔母が怪しい高齢者支援サービスに騙されて「全財産を遺贈する」契約を結ばされていることを発見します。「高齢者向けの犯罪が増えているとは聞いていたが、まさか自分の叔母が罠にかかるとは思わなかった」と語る曽根さんは、司法書士の夏目さん(仮名)に助けを求めます。
●前編:【「保証人を探すのが大変だから」79歳独身叔母が100万円超え身分支援サービスを契約…甥が発見した契約書の恐ろしい条項】
契約書に隠された「全財産遺贈」の罠
亡くなった母の妹の叔母は、独身だったこともあり、私や2歳下の妹を自分の子供のようにかわいがってくれました。化粧品会社に勤務していた叔母はセンスが良く、多趣味で知識も豊富なので話していて面白く、私は口うるさい母より叔母に親しみを感じていました。
結婚後も家族ぐるみで交流がありましたが、コロナ禍や私の離婚でここ数年は顔を合わせていませんでした。このゴールデンウィークに数年ぶりに会った叔母は、グレイヘアになり、晩年の祖母や母に似てきた印象でした。叔母もこの9月で80歳ですから、当然と言えば当然です。
訪問時に叔母の家で見つけたのが、高齢者向けに身分保証などを行う会社の契約書でした。叔母は昔から経済的にも精神的にも自立していて、身の回りのことはほぼ自分でこなし、人に相談したり頼ったりしないタイプです。おひとりさまゆえに「自分のことは自分で完結する」という気持ちが強いのかもしれません。
ですから、私や妹を頼ろうとせずこうしたサービスを利用していたのは実に叔母らしいと思ったのですが、よくよく契約書を見せてもらうとおかしな点がありました。叔母に万一のことがあった時には全財産をその会社に遺贈すると記載されていたのです。