<前編のあらすじ>

小学生で母を亡くし、男手一つで育ててくれた父に特別な思いを抱く坂本隆さん(仮名・53歳)。間もなく80歳になる父は、祖父と伯父がアルツハイマー型認知症で別人のように変わってしまった過去から、自分も同じ運命を辿るのではないかと恐れていました。

昨年、脳ドックでMCI(軽度認知障害)の疑いを告げられた父は仕事中の坂本さんに暗い声で電話をかけてきました。結果的にMCIではなかったものの、それを機に口数が減り、家に籠もりがちに。父の変化を案じた坂本さんは、認知症対策に詳しいNPO法人をネットで見つけ、代表の小笠原さんに問い合わせます。

●前編【「いずれ自分もそうなるのでは」アルツハイマー家系の80歳父が恐れた最悪のシナリオ…脳ドック後、家に引き籠もりがちになった理由】

穏やかだった祖父・伯父が認知症で見せた姿

今年傘寿(80歳)の父は、自分の父親と兄をアルツハイマー型認知症による合併症で亡くしています。

父の父、つまり私の祖父は教員、父の兄である伯父は公務員でしたが、二人とも読書や囲碁が好きで、どんな時も決して声を荒げたりしない穏やかな人でした。ですから、認知症が進んで奇行や妄言を繰り返すようになった時、私には、祖父や伯父の肉体に全く違う人の魂が入り込んでしまったかのように思えたものです。

ただ、そうした肉親の姿を間近で見てきた父は、同じ遺伝子を持つ自分が認知症になるのを極端に恐れています。定年を迎える頃から毎年のように脳ドックを受診しているのも、その恐怖心がなせる業だと思います。そして、昨年、その脳ドックで初めてMCI(軽度認知障害)の疑いがあるなどと言われたものだから、もう大変でした。仕事中に父から暗い声で電話がかかってきた時は、もっと重篤な病気が見つかったのかと焦りました。

結果的に父はMCIでもなかったのですが、以降は家に引き籠もりがちになりました。認知症発症後のケアや資産管理対策を啓蒙するNPO(特定非営利活動)法人に相談を持ちかけたのは、それがきっかけでした。