退職代行をよく利用される会社があります。利用者数1位の企業は、人材派遣会社大手で135人です。そして3位、6位、10位……と人材派遣会社は続々とランクイン。上位40社のなかで16社、全体の4割を占めます。
このデータを公開したところ、大きな反響がありました。柔軟な働き方ができるといわれている派遣社員ですが、ここまで何度も利用されるということは、現場単位ではどうにもならない構造上の問題があると指摘しなければなりません。
将来の夢を具体的に描けなかった
「人材派遣会社に入社して無期雇用契約を結べば、正社員でいながら、会社に縛られずにいろんな現場で経験が積めます。一緒にやりたい仕事を見つけましょう」
就職活動中、川口心音さん(仮名)は将来の夢を具体的に描けませんでした。そんななか、人材派遣会社のリクルーターからのひと言に勇気をもらったといいます。
オフィスは都内の高層ビル。開放感のあるロビーには観葉植物が並び、都内を一望できるおしゃれなカフェスペースもあります。「こんなステキなオフィスで働きたい」と入社を決めました。
しかし実際にその本社に通ったのは、研修期間の数日だけ。研修後、すぐに派遣されたのは、大手不動産会社のヘルプデスク部門です。社内のPCやシステムのトラブルに対応するサポート窓口に従事しました。
自社の営業担当者からは「日本を代表する一流企業に派遣され、ITスキルも身につく。すごくいい派遣先です」と言われ、川口さんも「キャリアの第一歩として理想的かもしれない」と感じていたといいます。