人生100年時代と言いますが、最近は老いてなお矍鑠(かくしゃく)とした人が大勢いらっしゃいます。吉田大樹さん(仮名)のお祖母様もそんな一人でした。
「亡くなった祖父は年相応な感じでしたが、祖母は80代後半になっても頭脳明晰だったんです」。だからこそ、お祖父様の遺産分割会議で「相続財産の総額が5億円でほとんどが投資資産」という驚愕の事実が判明した時も、「近い将来どれかを売却するなら名義が散逸しない方がいい。財産は自分が全て相続する」と冷静な判断を下したのでしょう。
しかし、そのお祖母様が脳梗塞で倒れて認知症を発症したことで吉田家の相続プランは大きく狂ってしまいます。3カ月ほど前にようやく申告・納税を済ませたという吉田さんに、カオスな体験を振り返ってもらいました。
〈吉田大樹さんプロフィール〉
東京都在住
33歳
男性
会社員
実家に両親と3人暮らし
金融資産500万円
老舗工芸店の跡継ぎ息子だった父
私の父は、老舗工芸店の跡継ぎ息子です。きょうだいは妹に当たる叔母だけで他に男子がいなかったので、普通のサラリーマンになりたかったのにやむなく祖父から家業を引き継いだと聞きました。
豪放磊落な祖父に対し、父は真面目を絵に描いたようなタイプ。下戸で酒席も苦手のため、当初はいろいろ苦労したようです。ようやく仕事に慣れ、昨今のインバウンドブームで経営が軌道に乗ったと思ったら、今度はさらに大きなトラブルに見舞われました。祖父の相続です。
