<前編のあらすじ>

中部地方在住の南田美玖子さん(仮名・50代)は、円満な家庭に育ち、自身も3人の子どもを持つ。しかし、認知症を患った母親が「暴君」と化し、状況は一変する。

母親は海外旅行にすでに成人している孫に渡すためだと大きなぬいぐるみを持ってきたり、「女がいる!」と父親に暴力をふるったり。

南田さんは施設に入れることを検討するが、「姥捨て山」のイメージを持つ父親の反対で実現しない。しかし、ついに介護疲れの溜まっていた父親が救急搬送される。

●前編:認知症で暴君化する母親も…「まだ頑張れる」父親の優しさで負担が増す理不尽な介護実態

父親の限界

搬送された父親は「右目の網膜動脈分枝閉塞症」と診断された。網膜動脈の枝の血管が閉塞して、視野が半分になってしまったという。

南田さんは父親の通院やケアに専念するため、ケアマネの勧めで、母親を初めて1週間のショートステイに預けることにした。

しかし母親は、初めての施設と知らない職員で不安だったのかもしれない。個室でなく共同部屋だったため、他人の荷物を触ろうとして職員から注意を受けたとき、母親は職員を平手打ちしてしまう。

母親は別のショートステイに移ることになった。

3月に入ると、母親の暴力はすっかりおさまったが、ほとんど寝たきりになってしまった。

一日中眠っていた日の寝具は酷い状態だった。南田さんは重くなった寝具全てを車で自宅に持ち帰り、お風呂場で下洗いをしてから洗濯機で洗った。その間、卒倒しそうなほど臭く、洗っても洗っても臭いが取れなかった。

そんな5月のGWの真只中、母親の顔が酷くむくんでいた。

病院はGW休みで、休日診療所に行こうにも、南田さんと父親の力では動かせない。その上、服も尿で濡れている。

救急相談に電話すると、そのまま救急につないでくれたため、救急隊員に相談。すると、着替えもやってくれると言われた。

救急隊員たちは4人がかりで母親を着替えさせ、搬送してくれた。搬送先の病院では様々な検査を受けたが、むくみの原因は分からなかった。

「この頃、母の着替えもオムツ交換も私一人ではできなくなり、いつも父と2人がかりでやっていたのですが、この時父はやっと、『施設に入れよう』と言ってくれました」