<前編のあらすじ>
2003年、就職氷河期の真っただ中で就職活動を行った田端慎吾さん(仮名・当時21歳)。100社近くに応募するも書類選考で落とされ続け、「俺はこの世に必要とされていないのか?」と自問自答する日々を送ります。
ようやく年収250万円の経理職に就くものの、やりがいを感じられず2年で退職。その後のコールセンター勤務も激務で1年で辞め、実家に戻って公認会計士を目指しますが、4年間不合格が続きます。
30歳を過ぎた頃から心配な症状が現れ始め、「母さん、聞こえたか? あいつら俺のことを笑ってやがる」と訴えるように。ついにはゴルフクラブを振り回して警察を呼ぶ事態に発展しました。
●前編:【「俺はこの世に必要とされていないのか?」就活失敗、国家資格不合格…失意のひきこもり男性が起こした警察沙汰のトラブル】
妄想や暴力は落ち着いたものの…
入院中に適切な治療を受けた慎吾さん。そのかいあって2カ月ほどで退院し、自宅に戻ってくることができました。
退院後、慎吾さんは興奮状態に陥ることもなく、妄想や暴力も影を潜めました。しかし、その一方で心配な症状が現れてしまいました。それは統合失調症の陰性症状と呼ばれるもの。陰性症状では、喜怒哀楽などの感情が乏しくなり、意欲や集中力の低下が見られます。さらには、やる気が起きない、人や物事に興味関心がなくなるといったことから、ひきこもり状態に陥ってしまうこともあります。
慎吾さんは退院してから1年以上が経過しても陰性症状が改善せず、母親の支援がなければ日常生活を送るのが困難になっていました。
勉強を再開することはできず、再就職の見通しも立たなくなってしまった慎吾さんのことを心配した母親は主治医に相談。すると障害年金の請求をするようアドバイスを受けました。
さっそく母親は障害年金の請求に向けて動き出すことにしました。しかし請求に向けてやるべきことは多く、何から手を付けていけばよいのか分からなかったので、母親は社会保険労務士である筆者に相談することにしました。