順風満帆だった50代夫婦、引きこもりの一人娘が気がかりに……

小林義和さん(仮名、以下同)は、都内の大手企業で部長職を務める、年収1300万円の55歳の男性です。同い年の専業主婦の妻と、30歳になる娘の和美さんの2人とともに、暮らしてきました。少なくとも会社員人生は「問題なく」過ごせている、という自負はありました。

そんな彼の唯一の気がかりが、娘の和美さんです。難関大学ではなかったですが、大学も4年で無事卒業し、その後は中堅企業に就職もしました。ところが、その会社をわずか1カ月で退職してしまったのです。本人が言うには「周囲とソリが合わず、ささいなことで注意されてばかりだった」のが原因とのことでしたが、ともかく以後、ずっと引きこもり状態になっていました。

ただ、この時は「長い人生、そんなこともあるだろう」と気にしなかったといいます。妻とも話したものの、「まだ若いし、しばらくゆっくりさせれば、いずれ社会復帰するだろう。何より容姿も悪くない“女の子”だし、いざとなれば結婚させれば大丈夫だろう」と夫婦そろって考えていたとのことでした。

ところが、娘は30歳を過ぎても引きこもったままだったのです。ほとんど外出もしていないため、恋人や友人の気配すらなく、社会復帰を考えているようにも見えません。何度か社会復帰や結婚の話をしたことはありましたが、毎回、「まだ体調がすぐれない」と言うばかり……。こうして少しずつ、彼の中で一人娘の将来に対する心配が大きくなっていきました。