<前編のあらすじ>

コンサル営業職として働く釆澤沙織。スタートアップ企業の共同経営者だった夫の智也とタワーマンションで暮らし始めて5年。智也は地位や会社を失い実質無職になり、家計は沙織が支えている。夢見ていた“きらきらの日常”は長く続かなかった。

●前編:【経営者の夫と憧れのタワマン暮らしのはずが…女性が直面した「厳しすぎる現実」】

タワーマンションに固執する夫

セレブになり損ねた女。

智也との無意味に豪華な結婚式に出席した友人たちは今頃、私のことをそうディスっているに違いない。

全収入を女磨きに注ぎ込んだガチ婚活の結果、スタートアップ企業の共同経営者と出逢い、結婚。湾岸のタワーマンションに移り住んだ。

「ムダな努力」「方向性が間違ってる」とさんざん腐した友人たちも目をむく一発逆転大ホームラン。絵に描いたようなシンデレラストーリーだったが、魔法は5年も経たないうちに解けた。

王子様だった智也は今や、ただの無職のDV(ドメスティックバイオレンス)夫だ。

おかげで折を見て辞めるつもりだったコンサル会社の営業の仕事を続けざるを得なくなった。それどころか、マンションの家賃まで負担させられ、独身時代より切り詰めた生活を強いられている。なのに智也にはこのマンションを出るという選択肢はないようだ。

マンション内のトレーニングジムで出会った河合陽太とのデートに応じてしまったのは、心の底では智也との生活にとうに見切りをつけていたからだ。

年下で弟キャラの陽太だが、1人でこのマンションを借り、アルファードを乗り回しているのだから、それなりの収入を得ているのだろう。性格的にも智也よりも肝の据わったところがありそうだ。

陽太こそ、監獄のような塔に閉じ込められた私を救い出してくれる運命の人ではないか。妄想が大きく膨らんでいった。