石橋亜紀さん(仮名)は専門商社の福岡支店在任中に知り合った男性と結婚し、その後は支店で転勤のない事務職として働いています。石橋さん自身は奈良県の出身。ひとり娘でもあり、実家の両親のことは気になっていたと言います。お母様は70代で認知症を発症したのですが、自宅近くで居心地のいい老人ホームを見つけ、そこで穏やかな最期を迎えることができました。その後、80歳を過ぎたお父様にも認知機能の低下が見られ、ひとり暮らしが難しくなったので、石橋さんは迷わず、お母様と同じホームに入居してもらうことにしました。そこなら安心と思ったからです。
ところが、半年ほど前からお父様が介護を拒否し、ホームともめるようになりました。介護の費用負担も上がり、石橋さんはホームに不信感を抱くようになります。そんな時に頼ったのが、お母様のケアマネジャーだった女性でした。女性の助言で石橋さんはホームに最後通牒を突き付け、お父様を別の施設に転居させることに成功します。「やっぱり介護はケアマネさん次第」とおっしゃる石橋さんに、転居に至るまでの顛末を話してもらいました。
〈石橋亜紀さんプロフィール〉
福岡県在住
56歳
女性
会社員
夫、大学生の長男と3人暮らし
金融資産3500万円(世帯)
母の時は安心だったホーム、父の時は一変
私は奈良の出身で、結婚してからはずっと福岡に住んでいます。ひとり娘なので実家の両親のことは常々気になっていました。
母親は70代で認知症と診断されましたが、家の近くで居心地のいい老人ホームを見つけ、亡くなる前の5年間をそこで過ごすことができました。
私が月に1度様子を見に帰省すると、家では父とけんかばかりしていた母が、同年配の患者さんたちと楽しそうに笑っていたのが印象に残っています。
今は80歳を超えてやはり認知機能が低下してきた父が、同じ老人ホームでお世話になっています。母の時の経験があったのでホームのことは信頼していたのですが、この半年ほど、疑問を覚える対応が多く、戸惑いを感じていました。