このままでは相続税が払えない…祖母の鶴の一声で解決
しかし、祖父の相続には特別受益云々などと言っていられない喫緊の大きな課題がありました。相続税は期限内の一括納税が基本となりますが、祖父の残した現預金だけでは相続税を払うのに足りず、近々に投資財産の一部を現金化する必要があったのです。
そこで手を挙げたのが祖母でした。江戸っ子の祖母はきっぷのいい姉御肌で、職人さんたちからも慕われていました。80歳を過ぎてもほとんど認知機能の衰えが見られず、時折、父に経理の面から鋭い助言をしたりもしていました。
その祖母が、「納税に向けて近いうちに現金が必要だし、いずれ売ることになるのだから、名義は散逸させない方がいい。私なら配偶者の税額軽減の特例(配偶者は1億6000万円または法定相続分までは非課税で相続できる)も使えるから、一旦は私が全部相続する」と言い出したのです。
まさに「鶴の一声」で、これには誰からも異論が出ませんでした。鋭い舌鋒で父の特別受益を主張した叔母も、「お母さんがそう言うのなら仕方がないわね」と引き下がりました。
恐らくはそう遠くない将来、祖母の相続が発生するわけですから、その時に父や私と交渉すればいいと思ったのでしょう。叔母にとっても祖母がいない方がずっとモノが言いやすいはずですから。
全遺産を相続した祖母が倒れるまさかの展開に…
かくして祖母が祖父の全遺産を相続することになったのですが、今にして思えば、すぐに税理士さんも交えてどの投資資産を売却するのか決めてしまえば良かったのです。しかし、遺産分割の話がまとまったという安心感から、話し合いはつい延び延びになりました。
祖母が脳梗塞で倒れたのは、そんな矢先でした。幸い一命は取り留めましたが、意識の戻った祖母は別人のようになっていました。血管性認知症というそうですが、記憶障害がひどく、病院まで見舞いに来てくれた税理士さんから「成年後見人を立てる必要があるかもしれませんね」と言われました。
●判断能力を失った祖母の代わりに相続手続きを進めるには、成年後見制度の利用が必要でした。しかし、そこには予想もしなかった困難が待ち受けていたのです。後編【税理士と成年後見人の話が噛み合わない…5億円相続で「我が家の利益」vs「祖母の利益」、33歳男性が相続で見た地獄】で詳説します。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
