祖父の相続税評価額は約5億円
祖父は88歳の大往生ではありましたが、その死は私にとっても大きなショックでした。祖父とは同居こそしていませんでしたが、近くに住んでいたので実質的な“内孫”としてかわいがってもらい、中学生の時には税理士さんから勧められ、祖父と養子縁組もしていました。下町育ちの祖父は、幼い私を作業の現場やお祭りなどに連れ出してくれました。
亡くなった頃には店の経営権はほぼ父にバトンタッチされ、「ご隠居さん」待遇だったので業務に大きな支障はなかったのですが、祖父があれこれ手を出していた投資が相続のネックになりました。アベノミクス以降の10数年で周辺の地価が上がり、祖父は土地を担保に借り入れをして、都心のマンションなどに投資していました。いかにも、江戸っ子で「切った張った」の勝負事が好きな祖父らしいと思います。
その結果、祖父の相続税評価額は債務控除後でも約5億円に上りました。とはいえ、現預金の比率は低く、1億円にも届きません。
叔母が猛反発「特別受益があるはず」
相続人は祖母と父、叔母、そして養子の私です。祖父は遺言書こそ残していませんでしたが遺産分割の腹積もりはあったようで、祖母や父に話していました。それは、祖父名義の財産は現預金のうち1000万円を私に、残りを父に相続させるというものでした。
これには叔母が猛反対しました。
継嗣である父や内孫の私は特別受益(相続人の誰かだけが被相続人の生前に贈与を受けていた場合は、それを相続分の前渡しとして相続分に加算する)があるはずだというのが、その理由です。
一方、祖父母と不仲であまり行き来のなかった叔母は生前贈与も受けていません。相続で長年の“格差”を解消すべきだというのが叔母の言い分でした。
