栗林ほのかさん(仮名)はフリーランスの研修講師。仕事先で出会った3歳年上の男性と結婚後、なかなか子供に恵まれず、不妊治療もうまくいかなかったため、10年ほど前からは夫婦の時間を充実させようと郊外にタワーマンションを購入し、スキーやダイビングなど共通の趣味を楽しんでいました。
そうした中で昨年、思わぬ悲劇に見舞われました。ご主人が54歳の若さで急逝したのです。大きなショックを受けた栗林さんに、さらなる試練が降りかかります。ご主人の両親はかなり前に亡くなっており、子供がいないので相続人は自分だけと思っていたら、音信不通だったご主人の兄にも相続権が発生していたのでした。「妻に全財産を相続させる」というご主人の遺言があればそれが有効になりましたが、遺言は残されていませんでした。
いきなり自宅にやって来た兄から「もらえるものはもらう」と凄まれた栗林さん。とはいえ、住居やレジャーにお金をかけてきたため、手元の現預金だけでは義兄の法定相続分を払い切れません。ご両親やお姉様にはマンションの売却を勧められましたが、ご主人との思い出が詰まったマンションを手放すのは抵抗がありました。果たして栗林さんは最終的にどんな選択をしたのか、ご本人から話していただきました。
〈栗林ほのかさんプロフィール〉
神奈川県在住
52歳
女性
研修講師
1人暮らし
金融資産230万円(世帯)
短命家系の予言が現実に…54歳で急逝した夫
私たち夫婦は子供に恵まれなかったこともあり、特にここ10年ほどは、2人の生活を楽しむことを大切にしてきました。夫は企業の管理職で年収は1000万円超。私もフリーランスの研修講師として年間500万円程度を稼いでいるので、郊外にタワーマンションを購入し、好きなダイビングやスキーに一緒に出かけたりしていたのです。
貯蓄のことをあまり考えてこなかったのは、夫の勤務先の福利厚生が充実していて、企業年金もそこそこ出るため老後の不安を感じていなかったことが大きかったように思います。既に“終の棲家”も確保し、万一夫が先に亡くなっても家は残るし、遺族年金が受け取れるので、私1人くらい何とかやっていけるだろうと軽く考えていました。
夫は短命の家系で若い頃から「俺は絶対、平均寿命まで生きられない」と言っていましたが、半分以上は冗談でしたし、50代になっても持病らしい持病はなかったので特に心配していませんでした。
ところが、昨年、その夫が急性心筋梗塞で亡くなったのです。54歳になったばかりでした。少し前から肩や胸の痛みを訴えていましたが、まさかそれが病気の前兆だとは夢にも思いませんでした。
