義兄の“恐怖の宣言”に体の震えが止まらなくなった夜
初めて会った義兄は、面差しこそ夫と似通ったところはあるものの、陽気でフレンドリーな夫とは対照的な、陰鬱で荒んだ雰囲気をまとった人でした。身長は178cmの夫と同程度の長身ですが、かなり猫背気味で、伸び過ぎた髪にしわの寄ったシャツやパンツが暗い印象を与えたのかもしれません。
さすがに門前払いをするわけにはいかず、部屋に通して飲み物を出しました。我が家は中層階ですが、大きく取った窓からは遠くに都心の夜景が望めます。
兄はそんな景色や、私たち夫婦が海外から取り寄せた家具やソファなどを値踏みするように見回した後、おもむろに言いました。
「ずいぶんといい暮らしをしてるんだな」
「そんなことはありません。むしろ、佳史さん(夫)がこんなに早く亡くなってしまって、これからのことが心配なんです」
やっとの思いで言い返すと、義兄は私の声が聞こえなかったかのように、「ここを売ったらどれくらいになるんだろうな」とつぶやきました。
そして、私の方へと向き直ると、「もらえるものはもらうからな」と宣言したのです。
唖然とする私の横から姉が「どういうことですか?」と口を挟むと、「だから、俺がもらえるものはきっちりもらうって言ってんだよ」と凄みをきかせ、「じゃあ、これからよろしくな」と引き上げていったのでした。
あまりのことに声も出ず、義兄が去ってしばらくしても体の震えが止まりませんでした。
●義兄の言葉に衝撃を受けた栗林さんは、最終的にどのような決断を下したのでしょうか。相続トラブルの結末とともに、後編【守るべきは「思い出のタワマン」か「手元の現金」か…義兄との資産争奪戦で52歳女性が下した苦渋の選択】でお伝えします。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
