<前編のあらすじ>

フリーランスの研修講師をしている栗林ほのかさん(仮名、52歳)は、夫との時間を大切にしながらタワーマンションで充実した生活を送っていました。

しかし昨年、54歳の夫が急性心筋梗塞で急逝。義両親も既に他界していたことから、「相続人は自分だけ」と思っていた栗林さんでしたが、音信不通だった義兄にも相続権があることが判明しました。

その後、栗林さん宅に現れた義兄はマンションや家具を値踏みするように見回した後、「もらえるものはもらうからな」と凄んで引き上げていきました。

●前編:「ずいぶんといい暮らしをしてるんだな」義兄が放った“恐怖のひと言”に戦慄…タワマン妻を襲った夫の急逝と相続争い

音信不通だった義兄が突然自宅に訪ねてきた日

元気で特に持病もなかった夫が54歳で急逝し、私は1人残される形になりました。夫は自分が短命の家系だから長生きしないと言っていましたが、まさか本当にこれほど早く逝ってしまうとは思わず、しばらくは茫然として何も手に付かない日々を過ごしました。

夫の両親はかなり前に亡くなっており、私たちには子供がいないことから、相続人は配偶者の自分だけだと思っていました。ところが、思わぬ伏兵が現れました。夫の年子の兄です。夫の勤務先が紹介してくれた税理士さんから、子供のいない夫婦の場合は夫のきょうだいも法定相続人になると教えられたのです。

義兄は学生時代から世界を放浪していた自由人で、夫とは性格が合わなかったらしく、きょうだいなのに何十年も顔を合わせていませんでした。私たちの結婚式や義両親の葬儀にも出席しておらず、私自身も写真でしか見たことがありません。にもかかわらず、夫の早逝により、その存在が大きくクローズアップされることになったのです。

義兄は義両親が亡くなった際に相続放棄をしたと聞いており、夫の相続になど興味がないものとばかり思っていました。ですが、それは少しばかり楽観的だったようです。税理士から連絡を取ったところ、いきなり自宅まで押しかけてきて「もらえるものはもらうからな」と凄まれました。たまたま私の姉が立ち寄っていた時で助かりましたが、その荒んだ姿と昏い目には恐怖を覚えました。