<前編のあらすじ>
大学時代からの親友である清水勇太さん(仮名・40代男性)と佐藤正人さん(仮名・40代男性)。清水さんが独立のため資金が必要になったとき、佐藤さんは快く240万円を貸した。2人はきっちりとした契約書を作成し、10年間、毎月の食事の際に対面で2万円ずつ返済を続けた。
最後の返済の日、清水さんは涙を流して感謝を伝え、佐藤さんも号泣。朝まで飲み明かし、変わらぬ友情を誓い合った。しかし数カ月後、佐藤さんから「返済を受けていない」との内容証明郵便が届く。「先生、私は信じていたんです。なのに、また返せと言われるなんて……」。青ざめた表情の清水さんは、専門家である筆者に対応を相談した。
●前編:【「10年間ありがとう」涙の借金完済から数カ月…親友から届いた1通の書類に40代男性が抱いた絶望と怒り】
対面返済に潜む危険な盲点
契約書を作り最後までしっかり返済した清水さんに対して、どうして佐藤さんは返済を促せたのだろうか。その答えは対面で返済していたことにある。対面で返済した場合、客観的な返済履歴が残らないのだ。
仮に銀行振り込みであれば、金額と支払日の履歴が残る。そのためこういった疑義はそもそも生じにくい。とはいえ、銀行振込も絶対ではない。佐藤さんのように一度返済したものに対して再度返済を要求するような場合は、何かしら別の理由を付けて返済を求めてくる可能性がある。
ここに契約書だけではカバーしきれない盲点がある。契約書では貸した事実を証明できても返済した事実は証明できないのだ。
そこで必要となってくるのがいわゆる「領収書」のようなものだ。あるいは返済時に都度、残高の変動を証明する「残高証明書」を発行するのもいいだろう。
要は何かしら佐藤さんから清水さんに返済したこと、あるいは残高が都度減っていることが証明できる書面を発行するべきだった。そうすれば、おそらく佐藤さんは今回のような無茶な請求をしてこなかったはずだ。
