<前編のあらすじ>

会社社長の友行さん(仮名・64歳)は、「生涯現役を目指して会社経営も頑張れるだけ頑張りたい」と考え、65歳以降も月100万円の役員報酬を受け取り続ける予定です。しかし、高報酬だと厚生年金がカットされる在職老齢年金制度のことが気になり、年金事務所に相談に行きました。

現行制度では報酬比例部分の年金月12万円が全額支給停止になるものの、2026年度の改正で基準額が緩和され、一部支給されるようになると知ります。改正の恩恵を感じ、「役員報酬はできるだけ受け取りたいし、じゃあ65歳以降ずっと報酬が100万円でも、報酬比例部分の年金が一部でも出続けることになんですね」と尋ねる友行さん。それに対し、職員は「そうとは言い切れないところもあります」と答えます。

●前編:【月100万円の役員報酬で“生涯現役”を目指す64歳社長「年金がカットされにくくなる」と聞き年金事務所へ、待っていた現実は…】

2027年から始まる上限額の段階的引き上げとは

標準報酬月額は8万8000円(1等級)から65万円(32等級)までの32等級に区分され、32等級となる65万円が現在の最高等級・上限額となります。役員報酬が80万円でも100万円でも200万円でも厚生年金の計算上は65万円の標準報酬月額で計算されることになります。しかし、この65万円という上限額が段階的に引き上げられることになります。

改正で65万円(32等級)より高い、新しい標準報酬月額・等級が設けられることになり、2027年9月からは68万円(33等級)、2028年9月からは71万円(34等級)、2029年9月からは75万円(35等級)が加わることになり、最高等級も段階的に上がっていくことになります。現在は、実際の報酬の月額が63万5000円以上の人が標準報酬月額としては65万円とされていますが、2027年9月からは実際の報酬の月額が66万5000円以上の人は標準報酬月額68万円に、2028年9月からは実際の報酬の月額が69万5000円以上の人は標準報酬月額71万円に、2029年9月からは実際の報酬の月額が73万円以上の人は標準報酬月額75万円へ変わります。

友行さんの役員報酬が月100万円であればその標準報酬月額は、2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へと新しい上限額の等級に変わることになります。そうなると、在職老齢年金制度による停止額の計算で用いる標準報酬月額も変わることにつながり、結果、支給停止額も変わることになります。