<前編のあらすじ>
45歳の会社員・稔は冬の賞与が大幅にカットされると告げられた。重い気持ちで帰宅した稔は、妻の里英に事情を説明する。
他の出費もあることから、毎年恒例の年末年始の家族旅行を諦めざるを得ないと夫婦で話し合う。妻・里英は落ち着いた様子で受け止めてくれた。
子どもたちに旅行中止を伝えると娘の利香は泣き出し、息子の猛は事情を察して妹をなだめる側にまわる。その気遣いが稔には心苦しく、自分の不甲斐なさに打ちひしがれる。
●前編【「わがまま言うなよ」まさかの冬のボーナス大幅カット…台無しになった年末年始休暇と"父親としての無力感"】
家で過ごすクリスマスと年末
クリスマスは無事にプレゼントを渡すことができた。旅行に行けないと分かってからずっと素っ気なかった利香も、欲しがっていた韓国アイドルの写真集とゲームソフトを手に入れたことですっかり機嫌を直してくれたようだった。
しかし、それでも稔の心が晴れることはなかった。むしろもので釣ったような気持ちになり罪悪感のほうが大きかった。
クリスマスを終えるとすぐに長期休暇に入ったが、気の重さは少しも変わらなかった。
里英はいろいろと手の込んだ料理を作ってくれたし、子どもたちも昼間は近所の友達と遊んだりして、それぞれに楽しい時間を過ごしているようだった。けれど稔は大掃除を手伝ったくらいでこれと言って何もせず、年末特番をぼんやり眺めながら過ごしているばかりで、そうしているとふつふつと自分の不甲斐なさを感じずにはいられなくなるのだった。
◇
大晦日になっても、年越しそばを食べ終えた稔はぼーっとテレビを眺めていた。
すると里英と子どもたちがはにかんだ笑顔で近づいてきた。寝室で何かをしているのは気づいていたし、後ろ手に手を組んでいるので何かを企んでいるのは明らかだった。
「どうした?」
「あの、これ……。いつも頑張ってくれてるからそのプレゼント」
そう言って利香は後ろに隠していたアルバムを見せてくれた。
「え……?」
