アルバムに詰まった家族の記憶

驚く稔に里英が説明をする。

「ずっとあなたが暗い顔をしてたから何かプレゼントして元気出してもらおうってみんなで話し合ってアルバムを渡そうってことになったのよ」

「そうなのか……?」

稔が尋ねると猛が笑顔で頷く。

「うん。さすがに見てらんなくて」

子どもたちに心配をかけるほど態度に出ていたことに稔は反省しつつ、プレゼントをしてくれたことをとても嬉しく思った。

「ほら、早く中見てよ!」

利香に急かされてページを開くとそこには小学校に入る前の利香が旅館の布団で寝ているところの写真があった。

「うわぁ、懐かしい」

思わず声が出た。利香がある程度大きくなってから、初めて4人で出かけた伊豆旅行の写真だった。

「覚えてる? あのとき、利香が興奮しちゃって全然寝なくてさ。あなたが、夜中に何回も抱っこをして部屋中をぐるぐる歩いていたでしょ。やっと寝たなって思ったら今度は猛が起きてみんなで寝たいってグズって。結局布団を全部くっつけて4人で川の字になって寝たのよ」

里英に言われて記憶が鮮明に蘇ってきた。

せっかくの温泉なのにゆっくり浸かる暇もなくて、夜もほとんど寝られなかった。それでも真ん中で小さな体2つが寝ているのを見ながら幸せを噛みしめた。

学生時代に友人やもちろん里英と2人で旅行に行ったことはあったが、子どもたちと出かける旅行は格別に楽しく、眠たくて疲れが溜まった帰り道に必ずまた旅行に行こうと決意をしたことを思い出した。

そこから稔たちは、写真をめくるたびに思い出を出し合った。

アルバムの終盤の方になると旅行だけではなく、家でだらだらと過ごしているときの写真がどんどんと出てくる。

「ちょっとページが埋まらなくてさ、それで最近の写真もプリントアウトしてアルバムに入れたんだ」

里英はいつも事あるごとに写真を収めてくれている。そこにいるのは稔がいないときの食事の場面だったり、2人でゲームをしているところだったりした。本当に何気ないものだったがその写真に稔は心を奪われた。