<前編のあらすじ>
入社30年の課長・染川は、部署の忘年会を欠席するという若手社員の山下を呼び出し、「周りとの関係を築くのも大事だ」と参加を促す。
しかし山下は「飲み会が仕事なら残業代が支払われるべき」と勤務時間外の会社行事には一切参加しない意思を明確に示す。飲み会で上司に気に入られて今の自分があると考える染川にとって、若手の価値観は理解しがたいものだった。
数日後、染川はコンプライアンス部から「実質的な強制ではなかったか」「評価に影響しないか」と繰り返し問われる中で、染川は自分の居場所が薄れていく感覚を抱き始める。
●前編【「残業代が出ないなら参加しません」飲み会を断る部下の言い分…飲みニケーション世代の課長が感じた違和感】
部長室での重い宣告
部長に呼ばれたのは、ヒアリングから数日後の午後だった。
内線で「第5会議室」と告げられた瞬間、胃がきゅっと縮む。ノックして入ると、部長と人事部の担当者が座っていた。テーブルの上には封筒が1つ置いてあった。
「お座りください」
先日のコンプラの件について、会社としての判断を告げられる。
忘年会の出欠に関する指導は、強制のつもりがなくても「実質的な強制」と受け取られ得る言い方だったとされ、2週間の自宅待機とマネジメントの再研修を命じられた。
担当者の手から封筒がそっと押し出される。クビではない。ただ、パワハラ認定と自宅待機の処分が今後に影を落とすことは間違いない。
「コンプラの判断は理解しますか?」
担当者が事務的な口調で尋ねる。
「……強く言いすぎた部分があった、というのは、否定できません」
絞り出すように答えると、部長がほっとしたようにうなずいた。
「ありがとう。そこを認めてくれるなら、話は早い」
続いて、部長が「ヒアリングで去年のことも分かった」と紙をめくる。
