<前編のあらすじ>
安村さん(仮名)は私立大学を卒業して働いている普通のサラリーマン。結婚を機に実家を出て以降、約30年もの間、両親の介護は実家暮らしの妹に任せっぱなしでした。
両親の葬儀の後、遺産の整理を始めたところ、両親の口座にたった数百円しか残っていないことが判明。本来3000万円以上あったはずの遺産のほとんどが消えてしまっていたのです。
妹を問いただすと使い込みを認めましたが、「私が介護をしたので当然の報酬だ」と開き直られてしまいました。
果たして安村さんは遺産を取り戻すことができるのでしょうか。
●前編:【「介護していたのは私でしょ? 私が使って何が悪いの?」遺産3000万円以上を勝手に使い込んだ妹と「30年間介護を任せっきりの兄」の泥沼劇】
「1500万円以上の遺産」を相続できたはず
さて、安村さんの妹の行為について簡単に整理をしよう。
妹の行為は「遺産の使い込み」に当たる。専門的な話になるので詳しい解説は省略させていただくが、妹の行為は同じ相続人である安村さんの権利を侵害する行為でもある。彼女の使い込みがなければ、安村さんは妹と等分する単純計算でも1500万円以上の遺産を相続できたわけだから当然の話だ。
つまり、安村さんは妹の行為に対して不法行為として責任を問うたり、不当に利益を得たとしてその利益を返還するよう責任を問うことができる。
実際に安村さんは自宅に戻ってからインターネットを中心に情報を調べ、そのことを知った。そして当事務所へ相談に来たことがきっかけで今日に至ったわけだ。
私は彼から一通り話を聞き、「当事務所に可能な範囲で妹さんへの対応をするなら、まずは内容証明の送付になるのですが……」と前置きしつつ「実際のところ、内容証明を送っても妹さんが使い込んだ遺産を返還させることは不可能でしょうね」と、心を痛めながらも率直な意見を述べた。
妹には支払能力がなかった
「なぜですか!?」
私の見解を聞いて安村さんは驚く。
「責任は問えるかもしれません。しかし、実際にお金を取り立てるとなれば話は別です」
結局、無い袖は振れない。要は本人に支払能力がなければお金は取り立てできないわけだ。これは裁判で勝訴判決を勝ち取っても変わらない。
安村さんにとって厳しい話だが、妹は実家で長年無職を続けていたようで、ほとんど働いてはいなかった。そのため、彼女固有の財産は一切なく、支払能力はなかった。これでは責任を問うたところで無意味なものになってしまう。
