<前編のあらすじ>

中古自動車販売業に勤務していた田原氏(仮名・20代男性)は、厳しいノルマと顧客からの無茶な要求に追い詰められていた。ある日、上司から明らかに不可能な納期の案件を押し付けられ、「俺は上司のスケープゴート扱いなのだ」と絶望する。

そんな中、SNSで退職代行の広告を目にした彼は、「安全に辞められる」という謳い文句に救いを見出し、翌日から出社せずに退職した。数カ月後、別の中古車販売会社に転職した田原氏だったが、今度は自らの無茶な営業で納品不可能な案件を2件抱えてしまう。

しかし彼が選んだのは、再び退職代行を使って逃げるという道だった。その数カ月後、退職した2社から連名で1000万円を超える損害賠償請求が届き、田原氏の人生は一変する。

●前編:【「退職代行で円滑に辞められる」はずが…逃げ癖が招いた想定外の悲劇、20代男性に突然届いた“恐怖の手紙”】

退職代行は損害賠償までは免除してくれない

「退職代行を使って辞めたんだから、私はもう関係ないはずです。内容証明を送ってください」

一通り彼から話を聞いた私は静かに首を振った。

「退職代行はあくまで退職の意思表示を代行するものです。退職手続自体を容易にするだけであって、退職過程で他者に与えた損害に対する賠償義務を免除する効力はありません」

そんな私に対して田原氏は「でも、サイトには円滑に辞められるって……」と食い下がる。

私も「サイトに書いてあることは誇張ですね。一部円滑に辞められた人がいることを大きく宣伝しているだけでしょう」と答える。そしてさらに「内容証明もこちらの意見表明に過ぎず、送れば主張が認められるものではない以上、現状としては送るメリットは薄いのが私の見立てです」と続ける。

損害賠償義務が免除されるかどうかは置いておくとして、とりあえず内容証明を送ること自体はできる。だが、送ったところでこの問題の解決においては何の意味も持たないのだ。はっきり言って送るだけ無駄である。

とはいえ田原氏も焦っているようで「そこを何とかならないんですか……」と必死に食い下がる。

しかし、どれだけお願いをされようとも法は変わらない。

私は彼からの依頼を丁重に断った。そして彼と私の接点はそこで終わった。