<前編のあらすじ>
高校3年の娘・汐里が進学を決め、自由登校となったことをきっかけに、美紀子は娘のメイクが濃くなり、行動範囲が広がっていくことに不安を覚える。
ある日、汐里は友人宅への外泊を突然告げる。事前の約束を破られたことで、美紀子の不安は一気に強まる。娘を心配するあまり、美紀子は防犯目的として見守り用GPSを旅行に持参するよう強く求める。
しかし汐里はそれを「監視」だと受け取り、激しく反発する。互いに感情をぶつけ合う中で親子の溝は深まり、汐里は翌朝、美紀子たちが起きる前に旅行に旅立ってしまった。
●前編【「お母さんの監視下にいるんじゃ台無し」外泊、派手なメイク…指定校推薦を得た娘の“豹変”に母が抱いた不安】
母の不安が現実に変わる朝
美紀子は汐里に電話をかけた。当然GPS端末は部屋に置きっぱなしで持って行ってない。もちろん電話にも出なかった。
美紀子は土曜日で会社が休みだった孝を起こしに寝室へ向かう。
「ねえ、汐里に電話かけて」
寝ぼけていた孝は意味が分かってなかったようなので事情を説明する。
「ああ、そういえば派手に喧嘩してたもんな」
「それであの子が勝手に家を出て行ったから1度電話をしたいのよ」
孝は呆れた様子でスマホを耳に当てていたが、まもなくスマホを置いてしまった。
「……無理だね。そりゃ俺の電話も警戒してるに決まってるよ」
「もう……! なんでこんなことをするのよ……⁉」
「そりゃ年頃だからさ親にあれこれ言われると反発したくなるだろ」
「だとしてもこっちは心配して言ってるのよ……⁉」
しかし孝はあまり気にした様子もなく立ち上がり伸びをした。
「大丈夫だよ。なんかあったら電話してくるって」
能天気な孝の反応が、美紀子の勘に障る。
「孝は本当に汐里のことを心配してるの⁉ あの子にもし何かあったらもう遅いのよ⁉」
「……大丈夫だよ。汐里だってもう立派な大人だ。あの子はしっかり者だし変なことをするようなことはないって。ちょっとは信用してやれよ」
「そうやって甘やかすからあの子はつけあがって……!」
声を荒げた美紀子を制するように、孝は厳しい目を向けた。
「高校3年間真面目に勉強を頑張ってきた汐里を俺たちは見てきただろ? そんな汐里が本当におかしなことをすると思うか? だとしたらお前こそ汐里のことを何も考えてないんじゃないか?」
孝の言葉に美紀子は言葉が出なかった。
たしかに汐里は、美紀子が言う通り真面目にやるべきことをやってきた。その結果が指定校推薦だ。だとしても汐里はまだまだ子ども。不安な気持ちがなくなるわけではない。
朝食を食べた孝はソファに座りテレビを見ていたが、美紀子はそわそわしながら何度か汐里に連絡をし、携帯を握りしめていた。
すると、着信音が鳴った。けれど鳴ったのは孝の携帯だった。
