「両親の資産はすべて介護をしていた妹によって食いつぶされていたんです」

そう語るのは今回話を聞かせてくれた安村さん(仮名)だ。

これに対し多くの読者諸兄は「そんなことあるのか?」と疑問に感じるだろう。だが、これは間違いなく現実に起こったことである。

それは彼から通帳を見せてもらうことができた私が保証する。

いったい何が起こったのか。信じがたいが現実に起こりうる相続の話を紹介しよう。明日は我が身だと思って読んでいただきたい。

約30年間、両親の介護は妹に任せっきり

安村さんはいい意味で「普通」のサラリーマンだった。そこそこの私大をストレートで卒業し、在学中から交際していた女性と24歳で結婚している。

普通でないところがあったとすれば、それは結婚と同時に家を出てから、両親が亡くなるまでの約30年間、両親の介護は妹に任せっきりにしていた点だった。

「別に押し付けたわけではありません。わざわざ自分が帰省して介護するよりも、実家に住んでいる妹に任せた方がいいし、両親も安心なはずだと思ったんです」

彼は当時を振り返りそう語る。

とはいえ、罪悪感も多少はあったようだ。「ただ……今振り返ると妹の気持ちをあまり考えていませんでした。妹は面倒ごとを押し付けられたと思っていたのかもしれません」とも付け加えていた。

今でこそ妹の負担に気付いているのだが、当時は気づいていなかったのだ。

それに気づいたのは両親の死後。相続のために親の遺産の状況を確認したその時である。

残高が数百円に……

両親の葬儀が終わると、安村さんはすぐ相続の手続きを開始した。妹に少しでも楽をしてほしいと思ったからだ。

「今まで妹に苦労をかけた分、悲しみの中にある妹にこれ以上の負担をかけたくなかったんです」

兄らしい雰囲気を醸し出しながら彼はそう語った。

安村さんはまず現金と通帳を確認した。するとそこには驚くべき光景が目に飛び込んできた。なんと残高が数百円になっていたのだ。