相談者は野口美代さん(仮名、43歳)。美代さんの夫(48歳)は脳梗塞の後遺症で、現在はほぼ寝たきり状態にあるそうです。夫は外出が困難なため、代わりに美代さんが障害年金の相談をしに筆者のもとへ訪れました。
面談の席で美代さんは言いました。
「実は……夫に障害年金が出るようになったら、離婚しようと思っているんです」
「えっ、そうなのですか?」
あまりの発言に筆者は二の句が継げませんでした。
この夫婦に何があったのか。まずは事情を伺うことにしました。
仕方なく行ったはずが…競馬場で一変した夫の人生
美代さんの夫は40歳を過ぎた頃、上司に誘われ競馬場へ行くことになりました。付き合いで仕方なく足を運んだため、夫はあまり乗り気ではありませんでした。
しかし会場を訪れるとその気持ちは一変。人々の熱気や会場全体を揺らすほどの大歓声、馬や騎手のデータから勝敗を予測する頭脳戦にすっかりはまってしまいました。夫はその後も競馬場に通うようになり、掛け金も次第に増えていきました。
この当時、美代さん夫婦の長男は小さかったこともあり、将来に備え貯蓄をしていました。しかし、夫はその大切なお金に手を付けてしまったのです。
「少しのあいだ借りるだけ。勝ったらあとで返せばいい」
夫はそのような軽い気持ちでいましたが、いつの間にか300万円を使い込んでしまいます。
ある日、美代さんは貯蓄がかなり減っていることに気が付きました。夫を問い詰めると「競馬で負けが込んでしまい、それを取り返そうとして貯蓄に手を出してしまった」と白状しました。
まさか夫が使い込みをしていたとは……。
美代さんは大きなショックを受けてしまいました。
