土下座しても止められなかったギャンブル

夫が「もう二度と競馬はやらない。貯蓄にも手を付けない」と言ったので、美代さんは夫を信用することにしました。

しかし、夫はギャンブルを止められませんでした。競馬場に行けなくなった夫は、美代さんに内緒でスマートフォンのアプリから賭けるようになりました。貯蓄に手を付けることこそしませんでしたが、代わりに会社の同僚や友人知人、消費者金融からお金を借りるようになったのです。

そして、そのときは訪れました。

返済に窮した夫が、美代さんに助けを求めてきたのです。その額400万円。

かなりの大金なので、夫婦の貯蓄からお金を返すこともできません。そもそも夫の身勝手で発生した借金。美代さんは夫の実家からお金を借りて返済することを提案しました。

すると夫は情けない声で言いました。

「もう二度とギャンブルはしないから、両親に言うのだけは勘弁してくれ。うちの両親は厳格だから、そんなの許してくれるわけないだろ? 頼む、お願い! 何とかしてくれ」

夫は美代さんの前で土下座をしました。

仕方がないので、美代さんの実家からお金を出してもらい返済することになりました。この出来事は、夫の両親に伝えることはしませんでした。

「心を入れ替えて、これからはまっとうに生きてほしい」

美代さんは夫にそう言いました。

しかし、夫はその後もギャンブルを止めることができませんでした。さらに悪いことに、美代さんが苦言を呈すると、夫は怒鳴り声を上げ、ときには壁やドアを蹴って美代さんを威嚇するようになってしまったのです。

そのたびに美代さんは夫への愛情が薄れていくのを感じました。