築年数は40年以上、最寄り駅まで車で15分はかかる

「で、でも……、家と土地はあるので……」と安村さん。遺産のうち唯一残った家と土地をアテにしているのだ。だが、私には嫌な予感がよぎった。

「念のため、その土地の登記簿を見せてもらえませんか?」

ちょうどその時彼は登記簿を持っていたので見せてもらったところ、嫌な予感が的中。どうやら土地は借り物のようで両親に所有権はない。使う権利しかなく、所有していないので、基本的には土地を売却してお金に換えることができないことが判明した。

では、建物はどうだろうか。結論から言うとこれも価値は無いに等しかった。築年数は40年以上で最寄りの駅までは車を使っても15分はかかるような場所にある。つまり、買い手はまず現れないだろう物件だ。

つまり、安村さんがアテにしていた家と土地には、全くと言っていいほど資産価値がなかったのだった。むしろ相続手続きやその後の管理などを考えると、相続によるデメリットのほうが大きい「負の資産」にすらなりうる。

このように、家や土地が相続財産の中に含まれていたとしても、必ずしも金銭的なプラスをもたらすわけではないのが、残念ではあるが現実だ。

私がその事実を伝えると安村さんは涙を流しむせび泣いた。それも無理はない。彼の希望はすべて打ち砕かれ、残ったのは厳しい現実と絶望だけ。気丈に振舞えという方が無理がある。

残ったのは負の遺産ともいえる不動産と壊れた妹との関係性だった。