勝美は車の窓をぼーっと外を眺めていた。

見慣れた景色が目の前に広がり、心はどんどん重たくなる。運転をしてくれている夫の祐太朗に引き返してくれと言いたい気持ちが膨らんでいく。

しかし今日ばかりはそういうわけにもいかなかった。今日は母である加奈子の三回忌だった。

加奈子は2年前にくも膜下出血で倒れ、そのまま息を引き取ってしまった。

75歳という年齢で別れも言えず、加奈子と離ればなれになったときにはかなり落ち込んだ。勝美はどんなときも優しく穏やかな母のことが大好きだった。

祐太朗が精いっぱい支えてはくれているものの、まだふとした瞬間に加奈子と過ごした日々が鮮明によみがえり、そのたびに胸がしめつけられた。

だが車はそんな勝美の気持ちを無視するように、実家に突き進んでいく。

母の命日に感じる憂鬱

実家のインターホンを押すとゆっくりと玄関が開く。喪服を着て黒いネクタイを肩にかけた状態のまま、父の辰雄が出迎えてくれた。

一周忌以来の帰省になるので会うのは1年ぶりだったが、辰雄は勝美の記憶よりも明らかに老けていた。80歳を超えているので当然だとも思うものの、つい数年前まであったはずの迫力は見る影もなく消え失せていることに驚かずにはいられない。

「……おう」

低くうめくような音だけ発して、父は引き上げていく。途中で、廊下に放置されていたゴミ袋の山に足を引っ掛け、雪崩が起きた。

玄関から廊下に至るまで、パンパンのゴミ袋が並んでいた。量からして昨日今日で出たゴミの量ではないことは明白だった。

ゴミが放置してあるのは玄関だけではなかった。居間のテーブルには弁当や惣菜の容器やペットボトルなどが置いたままになっており、床にも足の踏み場がないくらいに新聞や空き缶が放置されていた。