<前編のあらすじ>
40年以上勤めた会社を定年退職したあと再雇用で総務部に配属された博巳。経理部長だった彼にとって、部内での雑用のような仕事にプライドが傷ついていた。
そういった状況の中、博巳は妻の枝里子に異動で新課長となった岡田について愚痴をこぼしていた。岡田は部下の意見を聞きすぎて決断が遅い。会議がいつまでも終わらず、不満は募る一方だった。
総務部の会議でその不満が爆発。社員たちが好き勝手な意見を言す中、岡田は決断せずに話し合いを続けようとする。博巳は岡田を「上に立つ人間の器じゃない」と怒鳴りつけ、会議室を飛び出してしまった。
●【前編】「いつまでこんな茶番を続けるつもりだ!」定年後の再雇用で味わった苦悩と若手課長への怒りが招いた最悪の事態
謹慎処分を受けた博巳
会議を出てからはずっと針のむしろのような状態だった。多くの社員からは腫れ物に触るような目を向けてきて、岡田も声をかけてくることはなかった。怒鳴り声を上げた翌日には、この一件が上の耳に入り博巳は人事部に呼ばれて聴取を受けた。事情を伝えると、人事部部長は渋い顔をした。呆れや失望の見えた顔だった。そして今回の博巳の行動がどれだけ問題のある行動だったかを説明された。
「あなたはもう経理部部長ではないんです。岡田課長はあなたの上司に当たる人なんですよ。その人のやり方を否定し、怒鳴りつけ会議室から出て行った。そのような横暴な振る舞いを会社としては見過ごすことはできません」
博巳のように大声を張り上げるわけじゃない。ただ冷静に人事部部長は説明をしている。
しかしその言葉が博巳の胸に突き刺さる。勘違いをするなと言われてるのだ。博巳はそれに対して何も反論することができなかった。
「上で協議をして処分が通知されると思います。そして今後はこのようなことのないようにお願いしますね」
人事部部長はそう告げると会議室から足早に去って行き、後日3日間の自宅謹慎処分が言い渡された。
