<前編のあらすじ>
夫・孝と相談し美月は義父母へのお歳暮にビールとカニのセットを送った。しかし義母の加代は痛風の義父に配慮しない贈り物に激怒。美月と孝は、痛風のことを全く知らされていなかったため困惑する。
義母との関係に溝ができてしまったことを心配した美月は、年末年始に義実家へ帰省。そして訪れた美月を義父の達之は笑顔で迎えてくれた。
しかし加代は美月を冷たくあしらい、台所では「気が利かない」と美月の陰口を叩く。それを偶然聞いてしまった美月は、怒りを抑えながら居間に戻った。
●前編【「こんなものを送るなんてどうかしてるわ!」お歳暮のビールとカニにブチギレの義母…その「理不尽すぎる理由」とは】
義実家での気まずい食事
テーブルの真ん中には鶏団子がたくさん入った鍋が置かれていて、他にもぶり大根や筑前煮なども一人一人に出されている。孝は美味そうな肉だなと嬉しそうにしているが、もやもやした気持ちを抱えていた美月は食事を楽しめそうになかった。
それぞれが鍋に舌鼓を打つ中、美月は気配を消しながら淡々と食事をする。心なしか味すら薄いような気がする。
食事が始まって間もなく、おもむろに義兄の洋平が立ち上がり居間を後にした。すると2本の缶ビールを持って戻ってきて、ビールを義父の達之に手渡した。
美月は驚きを隠せずに唖然としていると、ビールに気づいたらしい加代が声をあげた。
「ちょっと何してるの? ビールなんて飲んじゃダメでしょ⁉」
しかし達之は加代の制止を聞こうとしない。
「何を言ってる? 今日は久しぶりにみんなが集まってるんだからいいだろ。今日だけは解禁だよ」
「ダメよ! また痛くて起き上がれなくなるわよ……!」
必死に止める加代に、達之は不可解そうに顔をしかめる。
「痛くて起き上がれない? 何のことだ?」
そんな2人のやりとりを見てクスクスと笑っていた里美に、美月は小さな声で質問を投げかけた。
「お義父さんって痛風なんですよね? ビールなんて飲んでいいんですか?」
美月から聞かれて里美はまたおかしそうに笑って耳打ちをしてくれた。
「それね、お義父さんが言った冗談よ」
「……え?」
「本当はただ足を攣っただけなのよ。そのときにお義母さんが心配してたから、からかうつもりで痛風だって言ったんだって」
美月は目を丸くする。
「でもそんな冗談、すぐに気付くはずじゃ……」
「お義父さんね、健康診断で肥満って言われたみたいで、2カ月くらい前から健康のために禁酒してたのよ。お義母さんも痛風だって思ってるからお酒類は一切買わなくなったし」
里美は、説明を聞いてさらに驚いている美月と同様に2人のやりとりを不思議そうに見ていた孝にも、同じ話をしてくれた。合点がいった孝は呆れたようにため息をついて、ビールを飲んでほんのりと頬が赤くなりつつある達之に言葉を投げつけた。
