冗談が引き起こした騒動

「父さん、いい加減にしてくれよ……」

「ん? 何だ?」

「痛風のことはちゃんと母さんに話をしておいてくれよ。そのせいでこっちがどれだけ迷惑を被ったと思ってるんだ」

孝は達之に対してお歳暮を送って起きたことの詳細を話した。それを聞いた達之はアルコールが回っていることもあってか、盛大に笑い出した。

「そんなことがあったのか! それはスマン! 軽い冗談のつもりだったんだが、こんな大事になるなんてな」

やりとりについていけてない加代は戸惑った顔で目線を左右に動かしていた。

「加代、痛風なんてのは冗談だよ。あれは単に足が攣っただけだ。お前をちょっとからかってやりたかっただけなんだよ」

「……え? じゃあ、あなたは痛風じゃないの?」

「そんなことは全くない。健康診断でも尿酸値は正常だよ。ちょっと太りすぎだとは言われたけどな」

「……もう! 心配させないでよ……! 私がどれだけ……!」

達之の説明を聞き、加代は驚きと不満の表情を作った。すると達之はくるりと体の向きを変え、美月に頭を下げた。

「美月さん、このたびは俺のせいで本当に申し訳ないことをしたね。君がうちに来てずっと元気がなかったり、落ち着きがないように見えていたのはそのためだったのか。気を遣わせてしまって悪かった」

「い、いえ、私はただお義母さんとどうにか仲直りしたいと思って……」

達之につづき、加代も頭を下げた。

「ごめんなさい。こちらの勘違いのせいであなたを一方的に怒ってしまって……! 痛風のことで食事をいろいろと気をつけていたときに例のビールとカニが送られてきたから、ついカッとなっちゃって……。でもあんなことをあなたに言うべきじゃなかったわ。本当にごめんなさい」

加代が達之のことを心配して怒ってきたというのが伝わってきた。出されてる料理もプリン体に気にしたヘルシーなものが多いから、本当に心配していたのだろうということがよく分かった。

「いえ、全然気にしないでください。本当に誤解が解けたのならそれで良いんです。私としてもきちんと確認せずに送ったのは悪かったので……」

美月も頭を下げた。これでもう大丈夫だろう。ほっとしたら、自分でも知らないうちに張りつめていた体がほどけて、どっと眠気が押し寄せた。