<前編のあらすじ>
結婚25年を迎えた恵実と地方公務員の克寿の夫婦。他県で1人暮らしをしている息子の明彦が1年ぶりに帰省してきた。
明彦がボーナスが減ったことなど仕事の大変さを語ると、克寿が貯金をしているか尋ねた。明彦の「投資をしているから大丈夫」という返答に、恵実と克寿は固まる。
克寿は投資をギャンブルと同じだと決めつけ、今すぐやめるよう説教する。2人は激しく言い合い、楽しみにしていた家族団らんは険悪な空気に包まれた。
●前編【「貯金はしてるのか?」父の問いに久々に帰省した息子が返した予想外の答え…年末の家族団らんが一転した理由】
ギクシャクした大晦日
克寿と明彦はたとえ同じ食卓を囲んでいても口を利かず、ギクシャクした関係は大晦日になっても続いていた。
夜ご飯は恒例の年越しそばだった。しかし節分の恵方巻のように、克寿は年末の歌合戦を見ながら、明彦は携帯を見ながら、黙々と食事をしていた。
「おかわりもあるから言ってね」
恵実が二人に声をかけたが互いに頷くだけでそこから会話が広がるようなことはない。恵実は内心でため息をついた。
せっかく楽しみにしていた年末年始だったのに、台無しになってしまった。年が明けたら3人で近くの神社に初詣に向かうのが毎年の過ごし方だったが、今年はそれも難しいかもしれない。
「母さん」
恵実は声をかけられたことに気付いて顔を上げる。
「おかわりもらっていい?」
「あ、うん。もちろんよ」
慌てて恵実は容器を受け取ってそばのおかわりを入れ明彦に渡す。
受け取った明彦は一口麺をすすった後で口を開いた。
「なんでそんなに投資が悪いものだって思ってるの?」
明彦の目は克寿に向けられていた。克寿は少し考えて話し出す。
