<前編のあらすじ>
年末年始の帰省を終えた雅世たち一家。お年玉は1万円まで自由に使い、残りは将来のために貯金するというルールがあり、息子の海斗もそれを守っていた。
翌日、ATMで海斗のお年玉を口座に預けようとすると、預金額は記憶よりも明らかに少なかった。銀行に出向いて記帳をすると、半年前に13万円が引き落とされていることが判明した。
口座に触れられるのは自分と道徳だけ。雅世の胸に、ある確信が浮かんだ。
●前編【「こんなものだったっけ?」小4息子のお年玉を将来のため貯金していた母…数カ月後にATMで気づいた預金額の異変】
口座に手を出した犯人
その夜、家に帰った雅世はコートを脱ぐより先に、使い切れずにいる有給をここぞとばかりに使ってまだ正月休みを継続している道徳に詰め寄った。
「おかえり。どうしたの?」
リビングのソファでテレビを見ていた道徳が顔を上げた。
「海斗は?」
「ゲームだよ。もう部屋でずっとやってる。イヤホンしてるから、肩叩かないと返事しないよ」
海斗がリビングに来なさそうなことを確認し、雅世は道徳に向けて訊いた。
「海斗のお年玉の口座から、お金おろした?」
道徳の目がほんの一瞬見開かれたのを、雅世は見逃さなかった。
「いいや、何のこと? 誰もあの口座に手なんてつけないよ」
平静を装って話しているつもりのようだったが、動揺は隠しきれていなかった。
雅世はリビングを出たあと、トイレに入り、深くため息をついた。
道徳が引き出したことは訊く前から分かっていた。通帳とカードは寝室のクローゼットに保管していて暗証番号を知ってるのも雅世たちだけだ。だから、あの口座からお金を引き出せるのはどう考えても雅世か道徳しかいない。
さらにあの動揺で、雅世の確信はほとんど事実に変わった。
しかし、そうなると気がかりなのは、13万を何に使ったのかということだった。
道徳はギャンブルの類いは一切しないし、お金がかかる趣味もない。月々渡しているお小遣いでうまくやりくりをし、追加をねだってくるようなこともない。
そしてなにより、海斗のことを大切に思っている。甘やかしすぎだと注意をしてしまうほどだ。そんな子煩悩の道徳が、海斗の将来のためにお金を貯めている口座から勝手にお金を引き落とすという動機がまったく想像できなかった。
もしかしたら自分が知らないところで何か変なことにお金を使っていたりするのだろうか。あるいは、借金でもあるのだろうか。
しかしいくら雅世が考えてみても、答えは一向に分からないままだった。
