夕日が沈む景色を車内から見ながら、雅世は大きなあくびをした。

年末年始は双方の実家に行くのが決まりとなっている。夫の道徳と結婚をしてから10年以上続いている慣例だった。

道徳の両親との関係は良好で向こうの実家に帰ること自体決して嫌ということではないのだが、多くの親戚付き合いをしないといけないこともあり、あまり気が休まるものではない。

心から長期休暇を楽しめるのは家に帰宅をしてからだった。

睡魔をごまかそうと、雅世は後部座席に座っている海斗をバックミラー越しに見る。次の春から小学4年になる海斗は最近こそ少し大人びたことを言うようにもなったが、今は子ども相応の嬉しそうな笑顔でお年玉の袋を開き、中の額を確認していた。

お年玉の使い道

「まだ出しちゃダメよ。誰からどれだけもらったか分からなくなるからね」

「分かってるよ」

「何買うかはちゃんと決めてるの?」

「うん。ゲームを買うっていうのは決めてる」

「ゲームかぁ」

「祐二と約束をしたんだ。2人で買って一緒に遊ぼうって。あ、今から買いに行こうよ」

海斗の思いつきに、運転席の道徳が前を見たまま首を横に振った。

「今日は勘弁してよ。疲れたし。それに、まだ2日だから、お店やってないんじゃないかな」

「えー、じゃあいつ?」

「帰ったら初売り調べてみようか」

雅世はそう言って軽く伸びをした。すると海斗が嬉しそうに後部座席からこちらに顔をのぞかせてきた。

「あともう1個、別のゲームも欲しいんだけどいい?」

しかし雅世は首を横に振る。

「1万円で2つ買えるの?」

「……ううん」

「じゃあ、もう1つの方は我慢して、お小遣いを貯めて買いなさい」

海斗はそこからもしつこく粘ってきたが雅世は頑として譲らなかった。

祖父母や親戚からもらえるお年玉の金額は年々増えている。しかし雅世たちには、どれだけの額をもらっても自由に使っていいのは1万円まで、というルールがあった。それ以外のお年玉については、海斗の将来のために貯金することになっている。

「祐二は3つゲーム買うって言ってたよ。うちだっていいじゃん」

「祐二くんちは祐二くんちなの。うちはダメ。それにね、別に取り上げてるわけじゃないんだよ。海斗の将来のために貯めてるの」

「ふーん」

海斗は分かったような、分かっていないような返事をした。

雅世は微笑んで、ふいに窓から差し込んできた西日に目を細めた。