すべてがつながった瞬間
直接訊くのが怖かった。これまで夫として父親として信頼してきた道徳の知らない顔を突きつけられるかもしれないと思うと、どうしても訊くことができなかった。
雅世がそんなもやもやとした日々を過ごしていたある日、エントランスの郵便受けに道徳宛ての見慣れない封筒が入っていることに気がついた。送り主は雅世でも聞いたことがあるような証券会社だった。
中身はなんてことないキャンペーンのお知らせだったが、雅世の中ですべてがぴたりと繋がるような感覚があった。あるいは、そうであったらいいという願望込みだったのかもしれないけれど、もうもやもやした気分はなかった。
◇
雅世は道徳と2人だけの時間が来るのを待った。12時を回り、雅世が先に寝室で待ち構えていると歯磨きを終えた道徳が入ってきた。ベッドに寝ていると思っていた雅世が座って待ち構えているのを見て道徳は驚く。
「……え? な、何してんの?」
「ちょっと話があるんだけどいい?」
「……何?」
雅世はそこで郵便受けから取っておいた封筒を道徳に見せる。
「これ何?」
雅世が出した封筒を見て道徳は目を丸くする。
「あ、それって……」
「証券会社からの封筒。あなたが投資とかそんなのに興味があるなんて話聞いたことないよ」
道徳はゆっくりと封筒を手に取る。
雅世は道徳に厳しい目を向けた。
「前に、海斗のお年玉口座の預金額が少なかった話したよね。誰かが13万円も引き出していた。あれ、あなたでしょ? 投資に使ったってこと?」
全てバレてると思ったのか道徳は観念するように深く息を吐いたあと、ゆっくりと頷いた。
「どうして? あのお金は海斗のものだよ。将来のために貯めておこうって海斗から預かってるものなんだよ?」
「ち、違うんだ。俺は別に自分のためにお金を引き出したわけじゃないんだよ。海斗のためにお金を増やしてあげたかったんだって……!」
「……どういうこと?」
「会社の仲間に投資をして車を買ったって奴がいたんだよ。コツコツやっていけばすごいお金が増えるって説明されて。だから海斗が大人になるときまでに増やしてあげて、びっくりさせてやろうって思ったんだよ」
道徳はそう説明したあと、「そうだ」とクローゼットの奥から隠していた封筒を引っ張り出してきて雅世へ見せた。封筒のなかにしまい込んであったのは、契約内容を記した紙だった。
「ほら、これさ期間固定型のやつをやってるんだ。だから満期にならないと払い戻しがされなくて俺が勝手に引き落としたりできないようになってるんだ」
道徳が嘘をついてないということは、契約書を見れば分かる。それでも勝手にお金を引き出した事実は消えるはずがない。
