親として守るべきルール

「……分かった。あなたの言うことを信じるよ。でもねどうしてこんなことを勝手にしたの? 一言相談してくれても良かったじゃない」

「……ごめん。驚かせたかったんだよ。実は投資で増やしてましたって話そうと思って」

「じゃあ前に海斗の口座にお金を預けるって言ったときに動揺してたのは、やましいことがあったんじゃなくて、サプライズがバレるからってこと?」

「あ、ああ。まだ全然お金が増えてないから、こんなすぐバレたら台無しだって思ってさ」

雅世は首を横に振る。

「……あなたが海斗のためにやったというのは分かったよ。でもね、どんな理由があっても人のお金を勝手に使うなんていいわけないでしょ? 自分の子どものことだからって軽く見ちゃダメだよ。海斗だって私たちを信頼してお金を預けてくれてるし、約束を守ってほしいものを我慢してくれてるのよ。それなのに私たちがそのルールを破ったらダメでしょ?」

雅世の言葉に道徳は深く頷いた。

「……そ、そうだよな。確かに勝手にお金を引き出すなんて海斗が知ったら嫌なはずだよな……」

道徳は自分のやったことを理解し反省の表情になる。

「このことは海斗には黙っておくから。とにかくすぐに下ろしたお金戻して。今回のことは水に流すから」

道徳は黙って頷いた。

投資に使ってしまったお金は、満期までは引き落とすことはできないので、13万円は道徳が自分の小遣いから少しずつ返していくことになるのだろう。

「本当にごめん。これからはちゃんと相談してやるよ」

「お金のことは特にね。子どもだからって親が好き勝手にしていいわけじゃないからね」

雅世は再度釘を刺し、道徳はもう一度頭を下げた。

その日は久しぶりに晴れ晴れとした気分で眠れそうだった。

もうすでに寝息を立てている道徳にはああ言ったものの、海斗の貯金を投資で増やしておくという選択肢はアリかもしれないと雅世は思った。ただし、もしやるにしても必ず海斗に相談してからではないといけない。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。