内容証明が一変させた2人の関係
件の内容証明によって完全に佐藤さんと清水さんの関係は一変し、お互いを憎しみ合うだけの関係になってしまった。良くも悪くも事実を知るのはお互いだけ。証明できるものはお金を貸したことを証する契約書のみで、返済を証するものはない。
内容証明を読むと「場合によっては訴訟を辞さない」といった旨の記載もあり、清水さんの焦りは募るばかりだった。周囲に相談して内容証明で応戦しようと考えたが、自信がなく作成について悩み続け、日にちだけが過ぎてしまったのだという。
ちょうどその頃、佐藤さんと私は共通の知人を通じ知り合った。私は彼から事の経緯を聞き、内容証明の作成を行った。
「柘植さんから内容証明を送ったら効果はありますかね……」
心配そうに尋ねてくる彼に対し、私は「全力を尽くします。まずは落ち着いてください」と伝え、翌日には内容証明を送付した。
内容としては「返済はすでに終わっていることから要求には応じられない」と強く要求を拒否するとともに、これまでの会合場所で支払いをした領収書がすべて残っていることや、一部ではあるがSNSでの返済についてのやり取りが残っていたことから、それらの履歴の存在も記載した。
あとは佐藤さんがどう出てくるかを待つだけである。内容証明を送った私も、この時ばかりは佐藤さんの出方に冷や冷やしながら日々を過ごした。
