相続は隠れた家族関係を炙り出すと言われますが、リアルに故人の秘密が明らかにされることもあります。長谷川亮太さん(仮名)のケースがまさにそうでした。

長谷川さんは2年前にお父様を亡くし、その相続手続きを終えた直後に今度はお母様が急死します。お母様の相続に取りかかる中で、お母様がお父様との結婚前に女児を出産していたことが判明したのです。長谷川家は資産家で、お母様の相続財産は自宅不動産を含めて3億円。その相続権は長谷川さんと実妹に加え、件の異父姉にもあります。妹以外のきょうだいがいたことはショックでしたが、それ以上に危惧したのが主に父方の祖父が築いた長谷川家の財産を、長谷川家から見れば赤の他人の異父姉に奪われてしまうことでした。

異父姉の存在に気付いた長谷川さんはどんな行動を取り、それに異父姉はどんな対応をしたのか。詳しい話を長谷川さんに聞きました。

〈長谷川亮太さんプロフィール〉
千葉県在住
43歳
男性
会社員
シングルで1人暮らし
金融資産2億3000万円

祖父が築いた財産を守り抜いた用心深い父

自分で言うのもなんですが、私はいわゆる資産家の家に生まれました。

長谷川家はもともと地元の素封家だったようですが、実質的な資産を築いたのは私の祖父です。戦後の高度成長時代に事業を興し、最盛期は100人近い従業員を雇っていたそうです。

しかし、一人息子だった私の父には祖父のようなビジネスの才覚はなく、事業も早々と手放していました。ただ、父は非常に用心深い性格だったので、金の匂いを嗅ぎつけて近寄ってくる詐欺師紛いの人たちに騙されることもなく祖父の築いた財産を守り、私や妹はその恩恵に授かることができました。

父は自分の相続についても、税理士さんの助言を受けて慎重に対策を進めていました。私や妹、義弟(妹の夫)、甥には毎年、贈与税の基礎控除(110万円)を若干超える贈与を行い、地道に相続財産の圧縮を図ってきました。