<前編のあらすじ>

ダイエットに成功した43歳の美和子は衣替えで去年の服がぶかぶかになり、努力の成果に頬を緩めていた。

しかし、45歳の夫・吉弘に軽口で「(減量は)誰でもできる」と言い放たれ、怒りが込み上げる美和子。

史上最重量の吉弘に健康診断の数値を突きつけ、強制的にダイエット生活をさせることに。観念した吉弘は渋々スタートするが、次第に本気度を増していく……

●【前編】「その程度、誰でもできるでしょ」努力とダイエット成果を馬鹿にする夫へ…妻が課した「復讐」

ダイエット成果を感じる吉弘

9月になり、夜は本格的に涼しくなってきた。吉弘は出された料理に何の文句もつけなくなり、体型も心なしか細くなってきたように見える。

「かなり成果が出てきたんじゃない?」

「そうだね。まあでもまだ最初に言ってた8キロには届いてないよ。もう少し頑張らないとダメだ」

吉弘はそう言うが、正直腹回りの肉も減っている。

「いやでも8キロって言ったのはあくまで適当なやつだから。もう十分痩せてるから少しずつ前のような生活に戻してもいいと思うけど」

吉弘は首を横に振った。

「いやいやさすがにそれはないよ。ここまでせっかく頑張ってきたのにもったいないじゃん。それにようやく俺は楽しさを感じるようになってきたんだから」

「そ、そう……?」

「そう言えば美和子ってジムにも通っていたよね?」

美和子は曖昧に頷いた。確かに契約はしていたが、吉弘と走るようになってからはあまり行ってない。

「俺もそこのジムに行ってもいい?」

「えっ⁉ 何で⁉」

「俺さ、いろいろとダイエットについて調べてたんだ。俺たちがやってるのって食事制限と有酸素運動だろ? それで体重は落ちてるけどこれだと筋肉まで落ちてることになるんだって。この状態だとすぐにリバウンドしてしまうから、筋肉をつけて脂肪だけが落ちてる状態にしないといけないんだって」

吉弘は饒舌に説明をする。

「……だからジムに通うの?」

「ああ。仕事終わりに筋トレをしようかなって思ってるんだ。やっぱりダイエットをするんだったらカッコいい体にもなりたいからさ」

「……まあ後でその手続きをしましょうか」

「ああ、頼むよ!」

妙にノリノリの吉弘に気圧されながら、美和子はスマホを開き、通っているジムの名前を検索窓に打ち込んだ。