打ち明けた吉弘の本音

吉弘は紳士服の店に行って気に入ったスーツを3着購入した。痩せて自信でもついたのか、3着のうちの1着はこれまでなら絶対に選ばなかったような、少しチェック柄の目立つ派手なスーツを選んでいた。

「美和子、ありがとな」

吉弘が急につぶやいたのは、帰り道、車を運転しているときだった。

「……え? どうしたのよ、急に?」

「いや美和子に無理やりダイエットをやらされなかったら、多分俺ずっとあのまんまだと思ってるんだ。正直、太ってるのだって気付いてたし、ダイエットに成功してる美和子に劣等感も持ってたんだ。でも根性ないし、自分からやるなんて言えなくて。だから無理やり美和子にやらされるくらいが俺には丁度良かったんだろうなと思ってさ」

吉弘のまさかの気持ちを聞き、美和子は驚いた。

「そんなふうに思ってるなんて気付かなかったわ」

「ダイエットに成功してる美和子に嫉妬してるなんてかっこ悪くて言えなかったよ。でもお前のおかげでダイエットもできて、自分に自信がついたよ。そうしたら仕事も頑張れるようになったし、何もかもが楽しくなってきたんだ」

明るく話す吉弘に美和子は同調する。

「確かに。最近、毎日楽しそうだなって感じてたわ」

「全部、美和子のおかげだよ。本当にありがとうな」

素直に感謝をされて美和子は苦笑いをする。正直、最初はダイエットを馬鹿にされた当てつけの気持ちもあったからだ。

痩せたことで想定外の出費もあったが、お釣りが来るくらいの幸せを買ったと考えるようにしようと美和子は思った。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。