夕食後、洗い物を終えた蓮美はリビングのソファでテレビを見ながらくつろいでいた。放送されているのはバラエティーで、ママタレントが姑の愚痴を話していた。
そこに義母の数子がやってきて、蓮美の横に座る。
「何やってるのかしら?」
「姑の愚痴をしゃべってるみたいですよ」
「あらあら、それは大変ね」
そう言いながら2人で、その愚痴を聞いて、笑い合う。
嫁しゅうとめ問題というものは世間ではいまだに話題になるものなのだが、わが家では一切そんなものは存在しない。この家に嫁いでから30年近く、蓮美は数子とずっと良好な関係を築いていたのだ。
しかしそんな関係に変化が訪れる。
その日、蓮美は買い出しのために郊外のスーパーに出掛けていた。そこへ夫である宗一から電話がかかってきた。
「父さんが倒れた……」
その言葉を聞いて、蓮美の頭は真っ白になった。
どうして? あんなに元気だったのに?
疑問が頭の中を駆け巡る。
そして宗一はすぐに病院の場所を教えてくれたので、蓮美は買い物をほっぽり出して、病院へと向かった。
宗義は脳梗塞を発症していたと判明、一命は取り留めたのだが、恐らく後遺症が残ると医者は話した。
その話を聞いているとき、数子はずっと心ここにあらずといった様子だった。
「お義母(かあ)さん、大丈夫ですよ。すぐにお義父(とう)さんは元気になりますから」
「え、ええ……」
うつろに揺れる数子の瞳が蓮美は心に残った。