怪しい陰謀論を妄信する義母
それから1週間後、また別の事件が起こった。
その日は日曜日で仕事が休みだった。お昼はラーメンでいいかと思い、棚を空けると空になっていたのだ。
「あれ、ここにラーメンを置いといたはずなんだけどな……」
蓮美がそう言ってると背後から数子が声をかけてきた。
「ああ、そこのラーメンなら全部捨てといたから、安心して」
蓮美は思わず振り返った。
「す、捨てたんですか?」
「ええ、そうよ。だって健康に悪いじゃない」
「いや、まあ、でもたまになら……」
そこで数子は鋭い形相で近づいてきた。
「蓮美さんは知らないから教えてあげるけど、インスタント麺ってとっても健康に悪いのよ……!」
「あ、そうですよね。添加物とか入ってるでしょうし……」
「そうじゃないの。インスタントの麺はあれ、小麦じゃないの」
「……え?」
「あれはね、全部シリコンなの。それに色と風味をつけて麺のようにしているだけなのよ」
蓮身はそこで言葉を失った。
「だからインスタント麺を日本人が食べるようになってから、ガンの発症率が上がっているのよ」
「で、でも、そんなものを国が許すわけが……」
「それが国の狙いなの」
「ど、どういうことですか?」
「だから、私たちを病気にさせることで、医者がもうかるでしょ? それで医者が国にお金を払ってこのことを黙らせているのよ。だから、もう絶対にインスタント麺は食べちゃダメだから」
蓮美は何から否定して良いのかも分からなかった。
荒唐無稽すぎる。そしてそれを信じ切っている数子に対して恐怖を抱いた。
そのことを蓮美は宗一に報告したが、しかし宗一は煮え切らない態度をするだけ。
「おやじが倒れて参ってるんだろ。好きにさせてやろう」
要は関わりたくないということだ。
それからも日に日に数子の状況は悪化していく。そして蓮美はそのことを電話で息子の圭太に愚痴った。
すると、圭太の同期にも同じような状況に陥った人がいるということが判明する。
●日に日に変貌していく義母、打つ手はあるのだろうか……。 後編【「それが国の狙いなの」陰謀論を信じて家の食品を捨てた義母の“切なすぎる”本音】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。