衣替えで気づく新たな出費
それから吉弘はジムにも熱心に通うようになり、体がさらに締まっていった。確かに筋肉がつくと体つきはシャープになり脱いだときの体は見栄えがかなり良くなっていた。顔つきもかなり若々しくなったような気がしてそれは妻としてとても嬉しいものだった。
だが、問題が起きたのは、美和子がタンスから秋冬の服を取り出して衣替えをしている最中だった。
「スーツなんだけどさ、ちょっと買い替えてもいい?」
声に振り返ると、吉弘が立っていた。美和子が持っていた秋冬物のスーツを手に取る。
「え? 何でよ? まだ全然着れるじゃない」
「いやさすがにもうウエストがぶかぶかでさ。ビシッと着れなくなってるんだよ。仕事にも支障が出そうだから全部買い替えさせてくれって」
吉弘の言葉に美和子は驚いた。太りすぎて着れなくなることを危惧していたが、まさか細くなりすぎてサイズが合わなくなるなんて。
「ちょ、ちょっとこれを着てみてよ」
とりあえず美和子は冬用の中の1着を吉弘に着せた。
「ほら、これじゃさすがにかっこ悪いだろ?」
吉弘の言葉に美和子は頷かざるを得なかった。
みっともないと思えるほどサイズが合っていなかった。特にパンツはウエストが全く合っておらず、ベルトをしていなければ脱げてしまいそうだった。
「夏はクールビズだったからそこまで気にならなかったけど、冬はさすがにジャケット着るし、こんな格好で会社に行けないって。だからもう買い替えないとダメだろ?」
吉弘にそう言われて美和子は頭を抱えた。スーツを3着分買い替えるとなると、10万近くの出費になる。今あるものを下取りに出したとしても大して値段は変わらないだろう。
「……そうね。それじゃ買いに行きましょうか」
