狭い更衣室でエプロンを外しながら、ひかりは深くため息を吐いた。今日も、勤務時間が終わった途端に全身に疲労感が押し寄せてくるのを感じる。スーパーでの仕事は常に立ちっぱなしの上、意外と力仕事も多い。50代半ばになったひかりの身体には、ひどく堪えた。

荷物をまとめて顔を上げると、店から割り当てられたロッカーの鏡の中には、覇気を失ってくたびれた自分の顔が映っていた。

ひかりは鏡に映った自分の残像を頭から追い払うかのようにロッカーの扉を閉めた。一日働いて化粧が崩れているのは分かっていたが、時間がないので特に直しもせず、髪を手ぐしでさっと整えただけで身支度を終えた。

「お疲れさま。お先に」

「あ、お疲れさまでーす!」

携帯を片手に談笑していた若いアルバイトたちに声をかけて更衣室を後にする。背後から女の子たちのはじけるような笑い声が聞こえた。

ひかりは時々、同じ職場で働く学生たちがまぶしくて仕方なくなってしまう。心身ともに若く、健康で、深刻な悩みなどなさそうな彼女たちを見ていると、さえない自分の生活が浮き彫りになる気がした。

それでも、今の自分には休んでいる暇などなかった。

パートを終えたひかりは、重い体を引きずりながら駐輪場へ向かい、雑念を振り払うように自転車のペダルを踏んだ。