<前編のあらすじ>
35歳独身の佑都は、正月の帰省で両親から結婚について話を振られる。弟の知己はすでに結婚し、昨年には子どもも生まれていた。これまで結婚を強く意識してこなかった佑都だが、徐々に自分の将来に漠然とした不安を抱くようになる。
佑都はマッチングアプリをインストールし、本格的に婚活を始めた。そして自治体主催の婚活パーティで同い年の山北絵梨香と出会う。堅実で丁寧な暮らしぶりを感じさせる絵梨香に、佑都は自然と惹かれていく。
やがて2人は交際を始め、結婚を見据えて同棲をスタートさせる。年齢的にも結婚への意識が近く、性格も補い合えるように思えたため、佑都は近いうちに両親へも良い報告ができると感じていた。
●前編【弟に子どもが生まれ35歳独身男に刺さった現実…婚活で手に入れた順調すぎる交際の先に見えた未来】
同棲で見え始めた違和感
同棲を始めたばかりの頃、佑都は絵梨香の几帳面さをとても頼もしく感じていた。家賃や光熱費の分担、食費の予算、日用品の買い足しなど絵梨香はすぐに表にまとめ、無駄が出たり負担が偏ったりしないように細かく管理してくれた。
あまりに細かくきっちりしているので多少は驚いたものの、新鮮でもあったし、結婚をするならこれくらいしっかりしている人じゃないとなと思ったりもした。
だが一緒に暮らし始めて2週間くらいが経った頃から、佑都は少しずつ違和感を覚えるようになった。
きっかけは仕事から家に帰ってきて、何気なくテーブルにコンビニのレシートを置いたことだった。
レシートの存在に気付いた絵梨香がすぐにレシートの中身を確認してきた。
「今日のお昼はコンビニだったの?」
「ああ。移動の合間だったから」
佑都は素直に答えた。
「820円も使ったんだ」
「昼飯とコーヒーを買ったらそれくらいはいくよ。物価も上がっているしね」
佑都の言葉に絵梨香は難しい顔をして答えた。
「それが分かっているならコンビニは控えたほうがいいんじゃない? 毎日とは言わないまでもお弁当を持っていったりするだけで全然違うと思うよ?」
同棲を始めてすぐ、絵梨香は佑都の弁当を作ると言ってきてくれていた。しかし営業でまとまった休憩時間を取れないことも多く、偶発的にランチミーティングが発生することも多い佑都は絵梨香の提案を断っていた。
「まあ、そんなに細かいこと言うなよ。外に食べに行けば800円くらい普通にいくんだし、同じことだろう?」
そう答えたが、絵梨香は釈然としない表情をしていて、佑都は胸の奥に小さな引っかかりを覚えた。
