ついに噴き出した本音
「佑都さんが仕事を頑張ってて、ゴルフがいい息抜きになってるのは、私も分かってるよ。でも……」
佑都としては自分なりに絵梨香の価値観に従ってやってきたつもりだった。それなのに――という気持ちが、佑都のなかで溢れだした。
「まだ俺はいろいろと我慢をしないといけないってこと?」
「そういうことじゃなくて、無駄遣いを止めてほしいって言ってるの」
「無駄? 友達と遊ぶのが無駄だって言うのか?」
絵梨香はむっとした顔をして言い返してきた。
「ゴルフに行くことをとやかく言ってないでしょ。ちゃんと私の話を聞いてよ。行くのはいいけど、ちゃんと管理をしてほしいって言ってるの」
「十分やってるよ。俺はこうやって休みを充実させるために仕事を頑張って稼いでるんだよ。それなのにこんなにゴチャゴチャ言われたらもう息が詰まるって……!」
「私はただ将来のことを真剣に考えてるのか不安だから……」
絵梨香は被害者じみた様子でため息をついた。それがまた、佑都の不満を膨れ上がらせた。
「考えてるから俺なりにやってるだろ? それでも足りないって言われたらもうそれは根本的に価値観が合ってないとしか言いようがないよ。絵梨香だって少しは歩み寄ってくれよ」
話は平行線だった。
それからも佑都と絵梨香の考えが折り合うことはなく、2人はあっさりと別れた。しばらくは同じ家に暮らしていたが、冷蔵庫や電子レンジなど佑都が使わないキッチン周りの家電を引き取って、絵梨香は引っ越していった。
佑都もしばらくはそのまま同じ家で暮らしていたが、もともと2人で住むために借りた部屋の家賃は少し高すぎて、冬が始まる前に会社近くのマンションへと引っ越した。
焦りは禁物
別れてから数ヶ月後、また正月がやってきて佑都は実家に帰省をした。知己は再び、家族を連れて帰ってきていて美香は2歳になっていた。
去年は抱かれて泣いているだけだったのに、今では部屋中を小走りで動き回ったり、「ママ、だっこ」と短い単語を繋げながら話せるようになっていた。
そんな姪っ子の姿に1年という時間の流れを感じた佑都だったが、智代は相変わらずで佑都の結婚について訊いてくるのだった。
「彼女くらいはいるんでしょ? その子と一緒になろうとか思わないの?」
「彼女がそもそもいないから」
絵梨香のことは両親には話していなかったし、今後も話すことはないだろう。少し寂しい想いもあるが、それだけだった。
「あんた、本気で結婚を考える気はあるの?」
「あるよ。ご縁があれば俺だってするから」
きっと少し焦る気持ちがあったのだろう。結婚はいいものかもしれないが、急ぐものでもないし、幸せを保証してくれるものでもない。佑都は智代にはそう言いながらも、しばらく独身の時間を楽しもうと思っていた。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません
