<前編のあらすじ>

下村弘和(47)と妻・円佳は、都内に住むITエンジニア夫婦。平均より所得が高く共稼ぎといういわゆるパワーカップルだった。

一人娘の友梨(8)の誕生をきっかけに、江東区の新築タワマンを購入して住み始めた。

以来、あまりタワマン内での近所付き合いをしなかったが、最上階付近に住む、VIP待遇の永山邦明(75)が、「パソコンを教えてほしい」と言って下村家を訪問する。

その際、座談の中で、永山邦明が「子どもを塾に通わせるのは、バカがやることだ」と、下村弘和を罵倒する事件が発生。

ただ、トラブルはこれだけで終わらなかった……。

●前編:【「所詮は低層階の住人、ろくに子育てもできないバカだな!」タワマンでVIP扱いの75歳元地主がIT系パワーカップルに吐いた暴言の意味】

「何か嫌がらせされるかもしれない」

子どもの教育方針は人それぞれ考えが違うもの。人と意見があわなくても仕方がない。下村弘和は普段からそう思っていたので、永山邦明から自分の教育方針を批判されたこと自体はあまり気にしていなかった。

ただ、マンション内で別格扱いされている永山夫妻の機嫌をそこねてしまったことはちょっと気がかりだった。

「厄介なことになったよなあ。永山さんはマンションの理事会長だし、これからやりにくくなってしまった。何か嫌がらせされるかもしれないし」下村弘和がそう言ってため息をつく。

「まさか、そんなことまでされるかな?」妻・下村円佳は古参タワマン住民たちの了見の狭さに呆れていた。タワマン内VIPの永山邦明を怒らせたのは間違いない。だが、下村夫妻がしたことといえば、永山邦明の意見に反論しただけだ。

古い世代の人だと、目上の人に反論すること自体失礼と思うのかもしれない。だが、ITエンジニアである下村夫妻にとって、自分の意見をはっきり口にするのは当然のことだし、何か悪いことをしたという自覚は皆無だった。

「あんなおじいさん、無理に仲良くする必要なんてないんじゃないの? なんだかんだタワマンは広いし、お互いに顔を合わせることなんて滅多にない。そもそも向こうが勝手に腹を立てただけで、こっちが気をもむのも馬鹿らしいわよ」

「そうだよなあ。まあ、しばらく様子見かな」そう言って下村弘和は妻・円佳の意見に同意した。

ただ、次の異変が起こるまでそう時間はかからなかった……。