<前編のあらすじ>

俊司さんは67歳の男性で、もうじき68歳になります。妻の里美さん(68歳)と一緒に暮らしています。

俊司さんは65歳を過ぎても年金を受給していませんでした。

個人事業主で、年収が3000万円ほどあるため、年金がなくても生活できていたのと、収入が多いためどうせ年金はもらえないと決めつけていたのです。

ただ、妻・里美さんから促され、年金事務所を訪れたところ、窓口で予想外のことを言われました。俊司さんは無事年金を受け取れるのでしょうか……。

●前編:「年収3000万円だから年金はいらない」と余裕ぶっこいていた…67歳男性が年金事務所で知った「判断ミス」

「違う手続きが必要なんです」

年金事務所の窓口で「今すぐ手続きしてください」と言われた俊司さんは、驚きました。

「今すぐ? 70歳まででもあと2年ちょっともあるし、まだ手続きしなくていいと思うのですが」

一方、窓口の職員は断言しました。

「65歳以降の老齢基礎年金と老齢厚生年金については、繰下げ受給を開始したい時に別途手続きが必要になりますが、それとは違う手続きが必要なんです」

俊司さんは昔18年間ほど会社に勤務し厚生年金にも加入していました。

俊司さんは1958年生まれ。65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できるほか、63歳から65歳までの2年間は、特別支給の老齢厚生年金(特老厚)の受給資格があります。

老齢基礎年金・老齢厚生年金は繰下げできます。俊司さん自身も繰下げ受給するつもりでした。

一方、特老厚は繰下げ受給ができず、65歳になるまでの2年間の有期年金として請求するものとなります。ですが、俊司さんはその特老厚の受給手続きをしていなかったのです。

年金には時効がある

職員が特老厚の手続きを急がせるのには理由があります。そもそも年金には5年間の消滅時効があります。5年を過ぎて手続きをした場合、時効になった分の年金を受け取れないこともあります。

俊司さんは68歳直前で、63歳から5年は経っていません。そのため、今すぐ手続きをすれば、2年間の特老厚は全額受給できるのです。

特老厚の手続きがもう少し遅ければ、時効により受け取れない分が発生してしまったことにもなります。

特老厚はカットされない

ただ俊司さんには理解できない点が残っていました。

「今までずっと収入が高かったし、年金はカットされて受け取れないと思っていたのですが?」

確かに特老厚や65歳以降の老齢厚生年金を受けられる人が、会社員等で厚生年金の被保険者となっている場合、在職老齢年金制度でこれらの年金がカットされてしまうことがあります。

しかし、俊司さんは個人事業主で、厚生年金未加入のため、在職老齢年金制度による調整の対象外となります。

そのため、収入が高くても、俊司さんの特老厚2年分は調整されることなく全額受給できるのです。

俊司さんの場合、特老厚の額は年間60万円ほど。これを2年分、120万円ほど受給できることになります。

「120万円ももらえるのは大きいな。妻に言われなかったら、手続きをしないまま放置して、時効になっていたかもしれない」

俊司さんは、年金事務所に行って良かったと心から思いました。

以上のように、年金には5年の時効があります。本当は受け取れるにもかかわらず、手続きをしなかった結果、時効で受け取れないという場合もあります。

年金を受給できる年齢が近づいたら、思い込みで判断せず、自身の受け取れる年金、必要な手続きについてしっかり確認しておきましょう。

※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。