<前編のあらすじ>
友伸さんは65歳以降老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給しており、美穂さんが年下のため、その老齢厚生年金には加給年金が年40万円程度加算されていました。
その美穂さんが63歳になったので、特老厚の受給の手続きのために、2人で年金事務所を訪れました。すると、年金事務所では「友伸さんの加給年金は加算が終了します」と伝えられ、友伸さんはショックを受けました。
なぜ友伸さんの加算が終了するのでしょうか。
●前編:「年金が40万円も下がったら生活できませんよ!」年下妻と再婚した67歳男性が年金事務所でショックを受けた「納得の背景」
年金分割を受けていた
美穂さんは前の夫と離婚した際に年金分割を受けていました。
年金分割とは、離婚後に婚姻期間中の夫婦の厚生年金加入記録を分割する制度で、合意分割と3号分割があります。
合意分割は当事者(元夫・元妻)の合意で、最大50%ずつを上限に分割する制度。3号分割は婚姻期間中に専業主婦だった場合など、国民年金第3号被保険者期間がある場合、元配偶者の厚生年金記録を合意なしに50%分割する制度となります。
ただし、3号分割は平成20年4月以降の期間に限定されます。
いずれにせよ、離婚後に標準報酬改定請求をすることで分割され、分割後の厚生年金記録で年金を受給することになります。
美穂さんの場合、前の夫との婚姻期間中は、専業主婦だったので、厚生年金に未加入で国民年金第3号被保険者でした。
そのため、平成20年3月以前の期間は合意分割を受け、平成20年4月以降の期間は3号分割を受けていたのです。
今回、年金事務所に手続きに訪れたのは、63歳からの特老厚の受給の件でしたが、年金分割を受けたことで、美穂さん1人の厚生年金加入記録で計算された額よりも多い額で受給することになっています。
「みなし被保険者期間」がある
年金分割を受けた場合、婚姻期間中、自身で厚生年金に加入していない場合でも、厚生年金に加入していたとみなされます。
合意分割の場合は「離婚時みなし被保険者期間」、3号分割だと「被扶養配偶者みなし被保険者期間」となります。
加給年金は、年下の配偶者が65歳になるまで加算されるのが原則ですが、配偶者に20年以上の厚生年金被保険者期間があって老齢年金(特老厚など)を受給できるとその時点までの加算となることについては、【前編】のとおりです。
美穂さんの厚生年金被保険者期間は14年でしたが、年金分割により、「みなし被保険者期間」が28年間追加されることになりました。これらの期間の合計で42年、つまり20年以上と計算されます。
この場合、美穂さんが63歳になり特老厚を受給できるようになると、その特老厚の額はみなし被保険者期間を含めて計算されるため増えるのですが、一方、友伸さんの加給年金が止まってしまうのです。
そのため、美穂さんが63歳になる頃、つまり、友伸さんが67歳の頃までしか友伸さんに加給年金が加算されないことになり、2年分の加算となります。友伸さんが当初想定していた4年の期間よりも2年短いことになったのでした。
年金分割を受けている場合は注意
「加給年金が2年分、80万円ほども少なくなってしまったな。年金分割で妻の年金が増えているんだから仕方がないとはいえ……」と諦めた友伸さん。
年金分割を受けた場合、受け取る厚生年金が増えることになりますが、一方で、今回の再婚した夫の加給年金のように調整されるケースもあります。
年金分割を受ける場合は、このみなし被保険者期間の取り扱いについて確認しておくとよいでしょう。
※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。
※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。
