相談者は藤代美知子さん(仮名、46歳)。美知子さんには48歳になる兄が一人います。兄は今までまともに働いた経験はなく、無職無収入で貯蓄もありません。80歳の母親と二人で暮らしており、生活費は母親の年金と貯蓄の取り崩しで何とかしのいでいます。

美知子さんは30歳の頃に結婚し、子どもは高校生と中学生の二人。これから子どもにもお金がかかるようになるので、兄や母に資金援助をすることは難しい状態にあります。

「母も高齢になり、いつまでもこのような生活を続けることはできない。残された時間はあとわずか。何かよい方法はないものだろうか?」

そう思った美知子さんは、兄が障害年金の受給ができないか考えるようになりました。そこで社会保険労務士である筆者に相談をすることにしました。

幼少期からの違和感と、ひきこもり生活への引き金

面談では、まず美知子さんから兄の事情を伺うことにしました。

兄は幼少期から少し変わった子だったそうです。くるくる回るものに異常な興味関心を示し、床屋のサインポールやお店の換気扇に見入ってしまい、そこから一歩も動こうとはしませんでした。母親が「もうおしまい」といって抱きかかえると、大声で泣き出してしまうのでした。他人に対する興味関心も薄く、友達と遊ぶよりも一人遊びを好んでいたそうです。

学校の勉強はほとんどできず、成績は1や2ばかり。それでも何とか高校は卒業できたものの、大学進学はできませんでした。高校卒業後、就職もできなかったため、兄は一時期アルバイトをしていたこともあるそうです。しかし、いずれも長続きはしませんでした。

仕事の指示が理解できずミスを連発。コミュニケーションが苦手なため、意思の疎通もままなりません。どの職場でも「使えない奴」というレッテルを貼られてしまい、兄は働くことにすっかり嫌気がさしてしまいました。

働かない兄に父親は大激怒。

「男が仕事もせずに家の中にいるなんて、何考えているんだ? 甘えていないで働け!」

そのようなことで、当時は父親と兄が大声を出しながら取っ組み合いのけんかをすることもあったそうです。何度か大げんかを繰り返したのち、兄は自室からほとんど出て来ないひきこもりのような生活を送るようになってしまいました。

最初の頃はそのような兄の存在に父親も母親も違和感を持っていました。しかし、いつしか兄が働かずに家の中にいる状態が当たり前になり、父親もほとんど口出しをすることはなくなっていったそうです。